飲食店ウエイトレス

飲食店で働くウエイトレスの制服は、数ある制服の中でも最も苛酷な環境にあるもののひとつだ。

汚されることが当たり前の日常を過ごさなければならない。その多くは制服の上にエプロンを装着するが、飲食物に囲まれた環境では、きれいなままで一日を終えることは稀だ。

さらに、エプロンの苦労も見逃してはならない。


神戸屋キッチン/レストラン

レストランとベーカリーを経営する外食産業である。神戸屋レストランと神戸屋キッチンはともにブランド名で、いずれのウエイトレスも同じデザインの制服を着用している。

神戸屋レストランのサイトによると、有名な青い制服は1987年から採用しているらしい。

可愛らしいデザインで人気があり、制服ファンが大勢いる。

白と青の可憐なイメージの制服。

ブラウスは胸にタック入り。半袖がメインだが、長袖も存在する。

ボトムスに青いフレアスカートを着用するが、これはラップ(巻き)スカートになっていて、マジックテープでウエストを留め、さらにブラウスの裾でボタン留めできる仕様になっている。襟元には青い蝶ネクタイを装着し、さらに髪飾りとして黒いシニオンがある。

白青チェックのエプロン前面にはポケットが付いていて、注文端末などを放り込む。端末はそこそこ重量があるので、ポケットが重そうに膨らんでいる様子が苦しそうに見える。

制服アイテムとして、スカートと同色の三角巾を着用する場合もある。

この制服を特徴づけているのは、チェックのエプロン。

背中でたすきがけにしている布ベルトは腰にボタン留めし、もう1セットの布ベルトを後ろで結ぶ。

背面はほとんどカバーしていない。

パンを扱うことが多いせいか、エプロンはすぐにパンの油のような茶色っぽい汚れにまみれる。汚れを落とさずに使い続けられたエプロンは、相当汚く見え、臭いもひどい。

制服一式は「IST」製。近年は制服ブランド名を「SUNPEXIST(サンペックスイスト)」に変更し、さらに現在は「サーヴォ」になっている。

スカートは総裏地付き。ウエストをマジックテープで留める仕組みでフリーサイズ。丈はウエスト含んで60cm。

ウエイトレスが仕事中はフレアスカートが優雅に揺れるのだが、業務が苛酷なのか、生地がヨレヨレになっているものや、裏地がずれてきて裾から見えているものなどもある。

さらに、消毒殺菌のため漂白剤を使うことが多いようで、せっかくの綺麗な青いスカートに漂白剤が飛び散り、ところどころ脱色したシミがついていることも多い。少々のシミも気にされず、そのまま使い続けられている制服スカートも散見される。


ブラウスには様々な工夫がある。襟にはタイを留めるための通しが付いており、またウエスト部にはスカートを留めるボタンが前後左右に計4個ある。

胸のタックは左右に12本ずつ。

素材はポリエステル65%、綿35%で手洗い(30度以下)可能のタグがある。ちなみにタグにはスペアボタンが1個添付される。


スカートはラップ(巻き)タイプで、ウエストにはマジックテープで留めるので、サイズはフリーだ。裏地はポリエステルのつるつる生地が裾まで全面に付いているので、このように大きく広げるとなんだか妖艶に見える。

素材は表地がポリエステル65%、綿35%、裏地がポリエステル100%で手洗い(30度以下)可能のタグがある。

↓広げた状態でウエスト部を端から端まで測ると約85cmあるが、基本的にサイズはフリーとされている。

腰部分の黒いものはマジックテープ。

↓白くて四角いものはブラウスとボタンで留めるもの。前と後ろに2個ずつあるが、着用のたびにいちいち全部留めていては面倒なので、少なくとも背面は留めっぱなしではないだろうか。スカートが付いたままハンガーに掛けられたブラウスを想像するとちょっと萌える。

画像:Charlotte-y



画像:ヤフオク

エプロンは青色のチェック柄で、アンダーバストからスカートの上半分を隠す仕様である。

前の左右にアウトポケットがあり、オーダーデバイス(ハンディターミナル)を入れる。画像のエプロンにはデバイスをつないでおく白い環があるが、付いていないものもある。

エプロンの生地自体は丈夫そうな布だが、重いデバイスを何度も出し入れされるせいか、端っこがたびたび解れてくる。それゆえ、手縫いで修繕されたものも散見される。

 素材はポリエステル65%、綿35%で手洗い(30度以下)可能のタグがある。

エプロンは制服を汚れから守るためにあるとはいえ、油断するとすぐにドロドロに汚される。

選択が十分でないエプロンはパンの油の匂いがプンプンして、いかにも神戸屋という感じがする。



リボンタイ↓

布製。長さ調節機能あり、ホックで留めるだけ。



神戸屋キッチンの三角巾↓



神戸屋レストランの名札。キッチンやサンドックインなどの系列店も似たようなデザインだ。写真は2005年ごろに使用されていたもの。



<メーカー名変更について>

株式会社IST(旧・鈴屋エンタープライズ)は、2014年9月に株式会社サンペックス(旧・アサヒ白衣)と合併し、社名を株式会社サンペックスイスト(SUNPEXIST)と改称している。従って、神戸屋の制服も、最近のものは同社のタグが付いているものがある。制服のデザインには大きな変更はない。

さらに、同社は2019年9月には「株式会社サーヴォ(SERVO)」へと社名変更している。

なお、メーカータグは基本的にブラウス、エプロン、スカートなどの基本アイテムに付いているが、付いている場所は一定しておらず、また、正規品であっても、タグが縫い付けられていないものも普通に存在している。

サンペックスイスト社名タグ↓


旧社名タグ↓

画像:ヤフオク


↓同じIST製でも、製作時期によってタグが異なる。この例ではスカートに素材タグも追加されている。

画像:Charlotte-y



↓可愛らしいウエイトレス制服も、お役御免で処分されるときはエプロンの紐で括られて、燃えるゴミとして捨てられるのだろう。関心のない人から見れば、もはやパン油やソースまみれの汚い布の塊でしかない。


以下は参考写真だが、ドイツで購入されたディアンドルと呼ばれる民族衣装である。ディアンドルの色柄は非常に多彩だが、写真の例では、着丈の短い白いブラウスとチェック柄のワンピースに青いエプロンを付けている。上で紹介した神戸屋のウエイトレス制服は、こうした民族衣装のデザインをモチーフにしている。下の写真は神戸屋の制服に似た色遣いで、その類似性がよくわかる。

下のディアンドルと比べて仕様として異なるのは、神戸屋が青いエプロンを巻きスカートとして採用し、チェックのワンピースをエプロンにしたことだ。さらにインナーブラウスの胸を強調するようなデザインにしたことで、爽やかさを押し出し、同時にちょっぴりセクシーさも与えている点で秀逸である。

画像:メルカリMIU




銀座アスター

中華料理店のウエイトレス制服。この上にはエプロンなど付けず、このままサービスするので、汚れが付きやすい。

メーカーは神戸屋レストラン制服と同じ「IST製」で、かなり上質である。




某ホテルレストラン

某ホテル内にあるレストランのウエイトレス制服。トラディショナルなデザインで清潔感もあり好感が持てるデザイン。エプロンは付いているが、形ばかりのものなので、ワンピース部分にも汚れが付く。エプロンはポケット付き。

ワンピースの裏地は、肩から裾まで付いているが、袖部分にはない。

従業員の間で使いまわされるので、傷みも激しい。




マクドナルド マックスター

ブラウス、タイト系のジャンパースカート、上着に赤いリボンタイをつける。

ファストフード店の花形職場だが、油汚れなどが意外と多い苛酷な環境である。

制服も従業員で使いまわされるので、傷みも激しい。


上着は総裏、ジャンパースカートはスカート部にのみ裏地が付いている。

納入業者はMITSUKOSHIである。



びっくりドンキー

ハンバーグ限定のファミリーレストランチェーン、「びっくりドンキー」のウエイトレス制服は、淡いグリーンのワンピースに花柄のエプロンを着けている。


ワンピースの白い襟は付け襟で取り外し不可。胸元のボタンは飾りで着脱は背中のジッパーで行う。

袖は三部丈のパフスリーブ。ウエストはギャザーの絞りがあり、ゴムが入っている。

スカート形状はタイト型、後ろ裾にシングルベント。

エプロンはたすきがけに着ける仕様で、ややフレアなシルエットだ。


ワンピースの裏地は、上身頃からスカート部の裾まで付いているが、袖には無い。

ファミレスでの仕事は立ち仕事が多いので、スカート部のお尻側には座りジワはほとんど付かない。座るとしたら、休憩時間ぐらいだろうか。

エプロンにはポケットが付いていて、ここに注文端末や割り箸などを押し込んでいる。


裏側に「エコロジーユニフォーム」宣言のタグが付いている。回収後は再資源として利用されるのだ。ポリエステルやナイロン製衣料は、多くの場合、溶かされて原料にされる。


すっかり裏返しにすると、裏地の付き方がよく分かる。

ウエイトレスが仕事している間、裏地はこのような様子で必死に頑張っているのだ。



ジンギスカン料理店

半袖ブラウスに黒いベストとタイトスカート。エプロンの類は着けていない。

オーダーを取るときに一々しゃがむので、タイトなスカートは生地がかなり引っ張られる。お尻の部分も靴のかかとが当たるようだ。

そもそも焼肉店なので、油臭くもなる過酷な職場である。



華屋与兵衛

関東の首都圏を中心に店舗展開をする和食ファミリーレストランである。現在は制服が変わってしまってとても残念である。

以前の制服は、写真の通り、濃紺のワンピースの上に、ウエストに控えめな白いエプロンという実にウエイトレスらしいものだった。和食をアピールするためか、胸元は着物の襟あわせのようなデザインをしている。写真では見えにくいが、白い布が胸のV部分を覆っている。

個人的に好みの部分は、裾のプリーツが割れると朱色の生地が垣間見えるところだ。ウエイトレスが忙しそうに歩を進めると、赤色がちらちら見えてなぜか萌える。


↓エプロンにはポケットが2つある。このエプロンはワンピースにボタン留めする。厚手でしっかりした生地だ。

裾のプリーツに朱色の生地が隠されているのが萌えポイント。襟にも同じ色のパイピングがある。


↓エプロンを外すと普通の半袖欄ピース。背中ジッパー仕様だ。


↓裏地はスカート部のみに付いている。胸元の合わせ部分はデザインのみで開いたりしない。



馬車道レストラン

埼玉県を中心に関東地方で展開しているファミリーレストランチェーンである。

ウエイトレスは、矢羽根柄の着物に袴姿という、明治・大正のハイカラさんスタイルの制服を着用している。

上の着物は着丈が短く、下の袴は女子大卒業式に観られるようなロング丈の行灯型の女袴だ。着物には袖があるのでタスキを掛けているというのがとてもリアルである。髪の毛にはリボンを付けていて、フェミニンな様子にそそられる。足元は編み上げのブーツを履くというのも凝った演出だ。

よく観る色柄は紫色だが、これはアルバイトだそうだ。たまに見かけた緑色の制服は正社員なのだが、2002年頃から朱色に代わっているようだ。

見かけは和服だが、生地はおそらくポリエステル(袴はウール混)で、汚れや衛生対策もされている。

上に着る着物の柄は、伝統的な和服にも見られる矢羽根模様だが、この伝統模様は羽根の並び方に種類があって、馬車道レストランの制服では紫と白抜きの羽根が交互に列に並び、さらに同じ向きの列が隣と色が同じにならないように、かつ矢の向きが同方向になるように沿っている。この2列をワンセットとして、隣に逆向きのセットがくる。そしてその繰り返しである。つまり矢の向きは↑↑↓↓↑↑のように並んでいるわけだ。

この制服は中古品がときどきネットで売却されているが、矢羽根模様のパターンが真贋を見分けるポイントのひとつとなるだろう。

 

最近は営業形態が細分化され、以前はこの制服を着たウエイトレスさんがいた店舗でも、いつの間にかピザ工房になっていて、ハイカラさんスタイルが拝めなくなっていることがある。もしかして、この制服はいずれ消えていく運命なのだろうか。



↓上衣の矢羽根模様の着物は単衣で裏地なし、丈は腰を隠すぐらい。伊達襟と布紐付きで着脱は簡単にできる。

紫色の袴は行灯型(スカートタイプ)で一般的な女袴と同じ造りになっている。ポケット付き。裏地はない。


↓腰ベルト(帯)と髪飾り(リボン)。