日本航空のキャビンアテンダント(CA)制服は、1951年に採用されたものを初代とし、現在使用されている制服は2013年に採用された10代目である。歴代制服詳細は、日本航空の公式ページに掲載されているので参照されたい。
1970年7月~1977年9月採用。
濃紺のミニスカートワンピースに赤いベルトが特徴的な制服で、長袖仕様と半袖仕様がある。
年配の方は、TVドラマ『アテンションプリーズ』で観た制服ということで馴染みがあるだろう。
画像:日本航空 制服の歴史
この制服はミニ丈ゆえに、殿方を中心に人気があったようだが、それを象徴するような記事を雑誌で読んだことがある。
1978年ごろ、モデルチェンジで不要となったこの制服が公式な頒布会に出品されたことがある。当時は現代ほどセキュリティも厳しくなく、旧制服の処分もCAに任されていたころだが、会社が回収した旧制服も一般に売り出されていたのだ。
航空関連の雑誌記事によると、キャバクラかパブなどの水商売を営んでいる経営者が、それら制服を大量に買い付けていったというのである。それを店の女性に着せて接客させる目的であることは明白で、スチュワーデス・パブの衣装として使われているのであろうと書いてあった記憶がある。
現代ではCA制服はすべからく回収され、リサイクル工場送りとなるのだが、当時はそのような形で再利用される道もあったのだ。美しいCAたちに上品に着こなされていた制服も、航空会社とは無関係の場所で着用され、飲食物で汚されたり、いやらしい手で触られたり、抱きつかれたりして余生を過ごす羽目となろうとは。
この制服の写真を観るたびに、地獄を見た制服たちのことに思いを馳せてしまう。
↓両者ともにやや厚手の生地で、裏地は付いていないようだ。ベルトのバックルの位置にある赤丸は、ワンピースに縫い付けられている。長袖と半袖では裾のプリーツの形状を微妙に変えてあるという、実にマニアックなデザインである。
背中ジッパーで着脱するのは同じ。
画像:ヤフオク=hirorin0851
↓ワンピースのうえにハーフポンチョが用意されていたが、別途コートがあったので、真冬の北国便以外、普段はほとんど観ることはなかった。
裏地はともに真っ赤なボアタイプ。
画像:ヤフオク=hirorin0851
1977年10月~1987年12月採用。
森英恵デザイン。
それまでのミニ丈のワンピースから一転して、清楚なワンピースにモデルチェンジした。
一般CAは、紺色のワンピースに、バックル付きの赤いベルトを締める。ワンピースの下には長袖のボディシャツを着用することもある。帽子はアゴ紐付きのツバ有り。
ワンピースの上にはブレザーコートと呼ばれるジャケットを着用する。
また、トレンチコートと呼ばれるロングコートもあるが、ウール製でしっかりしたコートで、裏地もつるつるスベスベの肉あるキュプラ生地が総裏で使われているというぜいたくな仕様だ。
コート着用時にはストールを合わせる。一般的には赤いストールだが、パーサーになると黄色いストールを使用する。
制服の基本カラーは役職によって2種類あり、一般CAとアシスタントパーサーは「紺・白・赤」で、パーサーになると「紺・黄色」となり、スカーフやボディシャツ、とベルトの色に顕著に表される。
また、アシスタントパーサーとパーサーは、ワンピースの胸ポケットのJALマークにウイングバッジを装着する。
ちなみにひとりあたりの費用は一式18万円だったとのこと。
↓ワンピースの裏地は背中の肩部分とスカート部のみに付いて、生地はさらっとしたもの。
↓ワンピースの上に重ね着するブレザーコート(ジャケット)も用意されている。着丈が長めでやや厚手の表地に、贅沢なつるつるのキュプラ裏地が張られている。上の制服ワンピースは、このつるつるスベスベの上質なキュプラ裏地に包まれて幸せだったことだろう。
日本航空がイケイケだったころの制服は、至れり尽くせりの高級制服である。
↓帽子の内側にも、ジャケットと同じ、キュプラのつるつる裏地が全体に張られている。写真の帽子はかなり使い込まれたものなので、皮脂や化粧品汚れと思われるものが縁と裏地に付着している。
スカーフはボディシャツと同様のイメージのストライプ柄。
エプロンは色地に数種類ある。
↓写真のような紺色のスーツケースも支給されていて、制服一式を収納することができる。
JALの文字入りの赤い布はストール、白いものは手袋である。一式をこのスーツケースに詰め込んで出発するのだ。
↓制帽のエンブレム
↓制服ボタン
1988年1月~1996年9月採用。完全民営化後のモデルチェンジで、一般公募で採用した。本井重信氏デザイン。
ミリタリー調のショート丈の上着にロング丈のタイトスカート、そしてブラウスにはリボンタイを結ぶ。スカートのウエスト部分にはベルトが装備されている。
上着もスカートもやや厚手の生地である。
私が香港-成田便のビジネスクラスの一番後ろの席に座っていたとき、私の席の裏側のシートポケットに、この制服のジャケットが丸めて押し込まれていたことがある。普通はコンパートメントなどの収納棚へ入れておくのだが(これも丸めて入れられていることが多いのだけれども)、そんな暇も場所もなかったのだろうか。
華やかで上品なCAのイメージとはうらはらに、素敵なジャケットが雑にくるっと丸められて、シートのネットに押し込まれていた。裏地も見えて実に痛々しい光景で、フライト中、気になって仕方がなかった記憶がある。
同じ路線でも、香港ベースのキャセイパシフィック航空は、上着をきちんとハンガーにかけて機内ロッカーに吊るしていた。
↓緑色のストール。上質で暖かい。
↓ジャケットの左胸につけるウイングマーク。写真は新品のもので、ベルクロ(マジックテープ)で留めるようになっている。
↓制服につける安全バッジ。タイピン式クリップになっている。例の日航機事故をきっかけに採用されたらしい。
↓カーディガンスタイルと制服のボタン。
↓半袖ブラウス。色柄のほうはリゾッチャスタイル。
↓機内サービス用のエプロンは同じデザインで、数種類のカラーバリエーションがある。
↓通常サービス用のエプロンとは別に、ディズニーバージョンのエプロンも存在していた。こちらもカラーバリエーションあり。
1996年10月~2004年3月採用。
ミッドナイトブルーと称する紺色の上着とベスト、タイトスカートのスリーピース。生地はやや厚手でずっしり重い。裏地はレーヨンとポリエステル混紡で上質なしっとり感がある。この8代目から帽子は廃止されている。
ブラウスは白地と花柄の2種類ある。
私は個人的にこの8代目の制服が好きである。CA制服の典型とも言えるデザインで、裏地はしっとりした上質なものだからだ。表地も肉厚で重量感があり、上着まで着るとCAさんもその重厚さに身を引き締めたに違いない。
9代目も似たようなデザインだが、この8代目の重々しい生地質には勝てない。
画像:パディピア
2004年4月~2013年5月採用。
上着は先代と同じシングルスーツだが、チャコールグレー色で、ボタンはひとつ減って3個の金ボタンになった。
スカーフはピンク・ブルー・グリーンの3種類が用意され、先任客室乗務員のスカーフは紺地に白、白地に紺の2種類である。
日本航空は2010年1月に会社更生法適用を申請し、事実上経営破綻している。直接の引き金は2008年のリーマンショックだった。2012年9月19日には東京証券取引所に再上場を果たすが、その余波はCAたちの制服にも影響し、以後、生地質や造りなどを過去の制服と比べると、かなりチープな印象のものとなる。
2013年6月~2020年3月採用。
デザインは丸山敬太氏によるもの。
スーツタイプだが、JALを想起させる「赤」を巧みに使ったデザインである。ジャケットはシングルスーツで金の2つボタンで、着丈はやや短い。襟の赤と後ろ裾のフレアプリーツはブランドカラーで鶴をイメージしているらしい。
ジャケットの中にワンピースを着用する。赤いベルトは5代目の制服を思い出させるコントラストだ。ベルトにはJALの象徴である鶴丸ロゴのバックルが付く。鶴丸はジャケットやワンピースの袖にも輝く。
斬新で可愛らしいイメージだが、生地質は、経営破綻の影響を受けてか、やや薄手でチープな感じは否めない。
エプロンは廃止されており、制服が汚れないか気になる。
先任(シニア)乗務員は白いジャケットを着用し、スカーフは職位・会社毎に異なるものを付ける。
2020年4月から採用された現行制服。
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最終更新日:2024年11月16日
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