キャバクラ

人気のキャバ嬢は常連客からドレスを買ってもらったりする。

新入りは最初、先輩のお下がりを貰い受けて着用することが多く、ドレスは代々使いまわしにされる。着用期間が長かったり、着用回数が多いドレスは傷みや汚れも激しくなるが、修繕やクリーニングはまともにされないこともある。メンテは着用者や店舗しだいというわけだ。

基本は飲食店の接客業なので、飲食物で汚れることが多い。さらには客に触られたり引っ張られたりもする。

お気に入りのキャバ嬢に貢物をするのも良いが、キャバ嬢が着ているドレスを買い取るという名目でお金をあげるのも、悦ばれるときがある。場合によっては高値を付けられることもある。ドレスはけっこう汚いので、買い取ったところで使い道は無いに等しく、客がそのままゴミ箱へポイすることもある。


キャバ嬢1

オフショルダーのロングドレス。肩紐や胸周りにはビジュー(宝石)が散りばめられている。さらっとした薄手のオーガンジー生地は青から白へのグラデーションで染められている。その下にはサテン生地があり、外から見たときに深みが出るようになっている。もう一つ下には裏地が裾までたっぷり付いている。

一見タイト系だが、裾は大きく広がるフレアである。歩いたときの揺れが優雅なドレスだ。



キャバ嬢2

背中が大きく開いたホルターネックのロングドレス。裾のほうは前後で極端に長さの異なるスワローテイルスカートになっている。

表側は、黄緑色のサテン生地の上にピンクのレース生地が重なった造りで、裏側は同じ黄緑色のつるつるサテン生地がそのまま張られている。同じ生地がウエストにも巻かれている。着脱は背中ジッパー。


 

後ろの裾が長く、着用したときは床に付いて引き摺るデザインである。そのため、歩く姿は優雅に見えるが、裾は汚れやすい。また、前の裾がかなり短いので、実際はミニスカートを穿いているようなもので、下には見せパンのようなものを着用することになる。

肩から裾までつるつるサテンの裏地が付いているので着心地は良いらしい。

 

思い出話だが、これを着ていたキャバ嬢は、つるつる裏地を気にすることもなく、どかどか腰を降ろしていた。そのたびに綺麗な生地はお尻の下に雑に敷かれていて痛々しかった。スカート部の前側の丈が短いので、客がふざけて手を入れてくることも多かったのだが、長い裾を脚に巻き付けて防御していることもあった。

ドレスの扱いがあまりに可哀想だったので、譲って欲しいと交渉してみたら、何度か大枚払わせられてやっとのことで救出できた。しかしながら、キャバ嬢ドレスとはいえ、衣類として生まれてきた以上は、どんな苛酷な環境に置かれようとも女性に着られるほうが幸せなのか、それとも助けてやるべきなのか、いつもこの悩みに苛まれる。



キャバ嬢3

赤い控えめな光沢だが、さらっとした生地なので、揺れる様子が美しいロングドレス。

ホルターネックに細かなアコーディオンプリーツである。ホルターネックは後ろで自分で結ぶ仕様になっているが、超結びがリボンのようで可愛らしいアクセントになっている。胸のカップが薄いものしか付いていないので、ヌーブラを装着する必要がある。

写真のドレスは、まだキャバ嬢になって間が無いという若い娘が着ていたものだが、いつも先輩のお下がりばかりでつまらないと言うので、お小遣いをやる代わりに買い取ったものだ。

女性が着ている姿は優雅だったのだが、ドレス単体ではその優雅さは感じられず、しかも顔をうずめると香水と女の体臭が入り混じった、変な臭いに満ちていて興奮しない。明るいところでつぶさに観察すると、あちこちにシミもあり、縫い目の一部に解れもあった。相当こき使われていたに違いないと思うと、可哀想で堪らなかった。

私の手元では持て余すこととなったので、結局、このドレスを着ていたキャバ嬢ファンの男性に転売してやった。今ごろどうなっているのかは知る由もない。