小学校は6年間同じ共学校で過ごした。男女では上着の形状が異なっていた。
女子の冬服は、
・上着:シングル3個ボタンのイートン型、後ろ裾シングルベント、アウトポケット、濃紺色。
・ベスト:Vネック、脇ジッパー、濃紺色。
・スカート:吊りひも付き、16本プリーツ
・ブラウス:丸襟、長袖、白色
・紐タイ
・帽子:ハット型、短いツバ付きハット型、赤色マットサテン生地
女子の夏服は、
・ブラウス:丸襟、半袖、白色
・スカート:吊りひも付き、フレア、明るい紺色
↓小学生制服スカート
綺麗についているプリーツも、座り方が悪いと潰されてしまう。
小学校の制服にはエプロンは無かった。
そのせいか、女子たちが走り回ると激しく揺れるアイテムとして、スカートに注目するようになった。低学年のスカートは丈が短めだったが、冬服はプリーツ、夏服はフレアだったので生地にもいささかに余裕があり、揺れる様子はじゅうぶんに観察できた。
小学校の1-2年のころから、女子たちの制服を哀れに思う気持ちは芽生えていたのだった。そのきっかけのひとつがスカートだ。
やがて、学年が上がるにつれて、スカートは、エプロンよりもはるかに可哀想な存在であることが分かり始めるのだった。
教室で女子たちが椅子に座ると、スカートの生地はお尻の下敷きになるのである。つぶさに観察すると、女子それぞれの座り方に個性があることが分かるようになってきた。
椅子に腰掛けるとき、スカートに余計なシワが付かないように、お尻を手で撫で付けるようにして座る子。
お尻の下で生地の塊りができないように、スカートの左右両端の裾を摘んで広げて座る子。
スカートをお尻の下に敷かないように、後ろの生地を摘んで後方へ広げて座る子。
スカートのことなど気にしないでドシャッと座り、生地をぐしゃぐしゃに潰す子。
同じ制服でも、着ている子によって可哀想な度合いにずいぶん差があることを確認した瞬間だった。しかしいずれもスカートが苦しい思いをしていることは変わりないのだが、私にとっての発見であったことには違いない。
小学校入学早々に注目していたのはスカートだけではない。
雑に扱われる上着も可哀想に思う対象となった。
衣替えの前後など、暑い日にはまるで邪魔者のように上着が脱がれ、教室の椅子の背もたれに掛けられたり机のなかに押し込まれたりしていた。私はそれを酷い扱いだと感じ、上着がとても可哀想に思った。きちんと畳むのならまだしも、裏返ったまま椅子に引っ掛けられていたり、適当に丸められて狭いスペースに詰め込まれていたり、さらには教室の横の棚の上に投げ出されていたり。自分の制服なのに、どうしてもっと丁寧に扱ってやらないのか。
そんな冬服上着に注目しているうちに、表地とは違う種類の生地が裏側に付いていることに気づく。その生地はツルツルした光沢があり、見るからに「か弱い」印象で、手触りもすべすべ。ふだんは他人に見せることのない特別なものに思えた。そんな裏地が女子たちの乱暴な扱いにより晒されてしまっている。制服上着たちはさぞや惨めで恥ずかしい思いをしていることだろうと思えて、可哀想に感じる度合いが一気にアップした。
以後、制服の上着の雑な扱いに注目するようになり、裏地に対して敏感になるのである。上着が適当にグシャっと丸めて置かれているだけで可哀想に思えたのだが、さらに裏地が晒されていると痛々しさが倍増するように感じた。
冬服上着を哀れむようになっていた私はある日、道端のゴミ溜めに自分の学校の女子制服上着を見つけた。小学校の3年生ぐらいだったろうか。上着は適当に丸められて放置されていた。紺色の裏地が少し見えていて、私は可哀想に思う一心で自宅へ持ち帰ってきた。
ゴミとして捨てられたものとはいえ、それを持ち帰ることは占有離脱物横領という罪に問われる可能性があるが、子供の仕業で、もう時効ということでここでは大目に見てもらいたい。
さて、学校では哀れな女子制服たちをそっと眺めるだけだったのだが、いま私の手元には制服上着が居る。使い古された挙句、不用品として捨てられたのであろうか、その上着は磨耗して光っているところがあり、どす黒いシミもついていて痛々しい姿だった。
裏側には、紺色のツルツルした裏地が張られているが、背中の辺りは水平方向に細かなシワが入っている。女子生徒がたびたび椅子にもたれたためにできたものだろう。ネームタグには、女子の氏名がサインペンで記入されていた。母親が書いたものだろうか、平仮名のきれいな文字で「かわなべ ゆうこ(仮名)」とあった。
要らなくなったら、女子生徒にも母親にも顧みられることなくゴミ溜めに放り出されるのか…。
私は制服の哀れな末路を知った。学校でも可哀想なのに、終わりも可哀想なんだな。
少なくとも、ゆうこちゃんの制服上着は救出することができた。
私はハンカチを濡らして、上着の表裏をそっと拭いてやった。いままでよく耐えていたね。いろんな扱いを受けて苦しかったね。可哀想にね。
そんなことを心の中で言いながら、私は今まで学校で目撃した、女子たちによる「制服虐待」のシーンを思い出し、手元のゆうこちゃんの上着を使って、再現してみようと思いついた。
ぐしゃっと丸めて置いてみる。裏地が見えて可哀想だ。
さかさまにぶら下げると、袖が垂れ下がって哀れだ。
私は裾をつかんで引き摺りながら、自宅の裏庭へ出た。踏みつける。放り上げる。やりたい放題やってみたが、当然、上着はされるがままで逃げも隠れもしない。なんて情けないヤツなんだ。イヤならイヤと言え。やめてください、助けてくださいと言え!泣き叫べばいいんだ!
壁に叩きつけられた上着は、ずるっとすべり落ち、無言のままグッタリして惨めな姿を晒している。裏地をキラキラさせている様子を見て、私はなぜか腹立たしさを覚えた。無抵抗のものに対する苛立ちだったのだろうか。
私は、物干し竿に上着の袖を通して、広げて干すように吊るしてみた。磔にされたような哀れで情けない格好に少し笑えてくる。それでも、上着は何も語らない。風が吹いてきて、裾がかすかに揺れているのは、ようやく逃げようという意志の表れだろうか。
「たすけてください」
かすかに聞こえたような気がした。
濃紺色の上着は、私に陵辱されたために、あちこちに土埃がついている。
風が強く吹いたとき、上着は大きく舞い上がったが、物干し竿にしっかり捕まっているので、すぐに元通り垂れ下がる。
「もう堪忍してください、許してください」
何を許してほしいと言っているのか。何の罪も無いのに。
お前はなんでそんなに弱いのだ?
服従あるのみという受身の姿勢にいっそう腹が立った私は、その制服上着を自らの手で処分することにした。
無防備に吊り下がっている上着に、泥団子を投げつけてみる。
泥があたった衝撃で、生地は一瞬後ろへ怯むが、また垂れ下がって、次の一撃を待つ。
「やめてください」
はっきりと聞こえた。2発、3発と泥団子を投げつける。苦しそうに顔をゆがめる上着が見えた。
ツルツルしたきれいな裏地も台無しになった。もう2度と着られることのなかった上着は、ほんとうに2度と着られない上着になった。
アウトポケットのひとつに泥を突っ込み、もう片方のポケットに手を入れて、思いきり下方へ引き降ろしてみたが、丈夫な制服は抵抗して思い描いた通りには破れなかった。
救出されたはずの制服は、意に反して少年に陵辱され、その日のうちにまたゴミとして廃棄されたのだった。しかも今度は生ゴミとともに。
ゆうこちゃんの上着には可哀想なことをしたものだが、この出来事をきっかけに、衣類たちの声が聞こえるようになった気がする。
小学校の2年生のころだったと思う。同じクラスにすでに好きな女子がいた。勉強ができて、お姉さん風な頼もしさと可愛らしい優しさを持った女の子だった。
そんな素敵な女の子は、自分の制服をどのように扱うのだろう。単純な興味から観察してみた。
椅子に座るときには完全ではないにせよ、お上品な様子でスカートを気に掛けるそぶりをみせて座り、上着を脱いだときはきちんと椅子の背もたれに掛けていた。そんな女の子に来てもらえている制服は幸せだなと思いながら、ほかの子と比べたりもした。
女子たちの制服を眺めていて、ふとあることに気づく。
外見は同じ制服の上着でも、裏地に違いが有るのだ。
ほとんどの女子の上着は表地と同系色の紺色の裏地が付いていたのだが、ある女子のは濃い目でしっとりすべすべ、別の女子のは薄い色でペラペラな感じといくつか種類があることに気づく。さらに興味を持って調べていると、明るいピンク色の裏地も僅かながら存在していた。あらためて私が好きだった子の上着を見ると、その裏地もピンク色だった。
外から観ると濃紺色の地味な上着なのに、それを脱ぐと派手な明るいピンク色の裏地が現れる。
当時、裏地の生地はポリエステルが主だったと思われるが、好きだった子の裏地はレーヨン系だったのだろうか、他の子の制服よりもしっとりスベスベ感が強く感じられ、とても印象的な表裏コントラストだったことを覚えている。
のちに知り合った人が、このような衣類のことを「コントラスト衣類」と呼んでいたので、私も表地と裏地の色合いが大きく異なる衣類のことをコントラスト衣類と呼ぶようになった。
また、あのピンク裏地の発見以来、コントラスト衣類にいっそう執着するようになるのである。
小学校4年生のころだったか、好きだった女の子の制服が変わってしまう。
ピンク色の裏地だった上着が、ふつうの紺色の裏地のものになったのだ。成長した体に合わせてサイズアップしたのだろう。私は、前の制服上着がどうなったのか、気になって仕方なかった。
制服というものはサイズが合わなくなったら、あっけなく交換されてしまうものだという現実を目の当たりにすることになる。
制服の裏地につるつるスベスベした生地が使われていることを知ると、それが気になって仕方がなかった。ふだんは他人に見せることのない特別な生地はか弱いもので、いたわってやらねばならない存在。優しく丁寧に扱われなければならない。
そんな風に考えていたある日、テレビ番組で、裏地のようなツルツル生地のドレスを身に纏う女性を見て驚愕した。裏側に隠されて守られるべきツルツル生地が、思い切り晒されている。女性に着られているドレスは、上から下までツルツルすべすべで、激しい動きに合わせて振り回されている・・・。こんなことが許されていいのか。可哀想すぎるじゃないか!
その後、テレビでこのようなツルツル生地のドレスや衣装をたびたび目にするようになると、学校の制服の裏地だけでなく、光沢生地の衣類にも関心を持つようになるのである。
当時自分が憧れていたアイドルが、サテン光沢のドレスを着て出てきたときは、この子もドレスを酷い目に遭わせるのかとがっかりしたことを覚えている。
私は、校内どこにいても女子の制服姿に注目していた。そして可哀想な様子を見つけては哀れんでいた。
教室の中では、グシャッと腰掛けられてお尻に潰されているスカートや乱雑に椅子の背もたれに掛けられている上着、体育の着替えで裏地が見えるように机に置かれているベストや袖が半分裏返ったままのブラウスなどを見ては、可哀想なことをするなぁとため息をつくばかり。
校庭においてはもっと悲惨な光景があった。
走り回る女子のヒラヒラゆらゆら揺れるスカート、ベンチのうえに広げられて敷物にされている上着、鉄棒にタオルのように巻きつけられて逆上がりの練習に使われている上着など、見ていられない虐待ぶりに怒りさえ覚えていた。
小学校4年生のある日、私は校庭にある遊具のひとつ、登り棒の太い支柱に捕まって上のほうに上っていた。そして、そこから校庭で遊ぶ女子たちを見ていると、鬼ごっこ最中だったのか、女子同士がつかみ合いになり、片方の女子がもう一方の女子を引っ張ったとたん、掴まれた上着が脱げてしまったのだ。その上着は振り回され、引き摺られてから、高く投げ上げられて地面に落ちた。さらに女の子同士で上着の引っ張り合いになった。上着は、陽の光の下でツルツルの裏地をキラキラさせながら、苦しそうにしているが、女の子たちはおふざけを止めない。
「やめてよ~、返してよ~」と言いながらも楽しそうだ。
登り棒の支柱に抱きついたまま、それを観ていた私は上着が可哀想で堪らなかった。
何てひどいことをするんだ!
そう思って、支柱にぐっとしがみついた瞬間、股間にジンジンという痺れに似たような感触が起こったかと思うと、頭までジ~ンが一気に駆け上がり、全身が不思議な快感に包まれたのだった。それが病みつきになり、私はたびたび支柱によじ登り、女子たちの制服姿を眺めながら、ジ~ンとするのを待つようになった。
さらには、遊具の支柱が無い場所でも、女子たちの制服姿を観ながら、自分の股間を圧迫するようになる。もちろんエロイ気持ちからではない。純粋に制服たちが可哀想だと思いながら、授業中などに股間を手で押さえ圧力を掛けることを覚える。そうすると、支柱で得たようなジ~ンが再現できることが分かり、回数も増えていくのだった。
ジ~ンという感触を得ると、私はこの上も無く満足感を覚えることができた。精通はしていないものの、本来は性的絶頂に達しているのだから当たり前だが、当時はそれが何なのか分からず、私が制服たちを可哀想に思う気持ちが通じたのかなどと思っていた。
以後、教室の机に座ると、パンツから性器(ペニス)を出し、制服の短パンの裾でそれを擦るという行為を繰り返すようになる。性器を短パンの布地で包んで擦るような格好だ。今にして思えば、立派な自慰行為なのだが、当時はそんなことに思い至るはずもなかった。主に授業中に、眼前にいる女子たちの制服を哀れみ、「可哀想に、可哀想に」と心の中で叫びながら、そうした自慰行為を繰り返す日々となる。
小学校4年生のころだったと思う。クラスに「さとう かよ(仮名)」さんという女の子が転校してきた。彼女は、クラスの女子とは少し違う制服を着ていた。制服なんて単なる衣類で、道具にすぎないと思っている人たちにはどうでもよい違いだったと思うが、私にはすぐに認識できた。濃紺でイートン型という点は同じだったが、ダブル4個ボタンで、スカートはボックスプリーツだったのだ。
私はそのとき、他校の制服を初めて間近で見た。彼女は前の学校の制服を着て登校し続けていた。しばらく注目していると、制服の扱われ方はクラスの女子と大差ないことを知る。他の学校でも制服たちはみな等しく可哀想なんだと思った。
学校で運動会が行われた日のこと。
私の学校では、運動会当日になると自分の椅子を教室から校庭へ持ち出して、競技トラックの周りに並べて座っていた。秋風がときどき冷たくも感じられる季節だったので、生徒はみな体操服の上に制服の上着を羽織っていた。
太陽が昇るにつれて気温も上がり、女子たちの中には制服の上着を脱ぐものもいた。そうなると気になるのは上着の扱われ方だ。ほとんどは椅子の背もたれに掛けている。サイズが大きめの上着などは裾や袖先が地面に着いて、土で汚れてしまっている。それだけで私にはじゅうぶん可哀想に思えるのだった。
ふと見ると、私の前に座っていた転校生のさとうさんの上着も脱がれて、椅子に掛けられている。みんな応援に夢中で、立ったり座ったり。椅子は前後左右に揺さぶられ、上着もゆさゆさ揺れている。その裾は地面に触れて土の汚れが付いている。それなのに、誰も見向きもしない。垂れ下がった袖の揺れる様子がますます哀れだ。
私は可哀想に思う気持ちがいっそう昂じて、何を思ったか、自分の体操服の短パンから性器を出すと、佐藤さんの上着の袖を持ち上げ、袖先に突っ込んだのだった。それまでは自分の制服短パンの裾で性器を包んでいたのだが、女子の制服に触れさせたのは初めてだ。ふだん女子に酷い扱いを受けている制服を可哀想だと哀れんでいた私だったが、いま自分が可哀想なことをしていることには気づいていなかった。ただ、目の前で椅子の背もたれに掛けられて放置され、可哀想な状態にある制服の上着を哀れみたい一心で、袖先で性器を包み、夢中で擦り続けたのだ。
周りにはクラスメートが何人もいたが、みな応援に集中していて、私の自慰行為には誰も気づいていない。やがて、例のジ~ンという感触を得て、私は制服の可哀想な気持ちを共有できたような気がして満足した。
さとうさんの上着はほぼ一日、背もたれに掛けられていたので、私は何度か袖で可哀想な気持ちを共有した。幸いにも誰にも見咎められることはなかった。
さとうさんには申し訳ないことをしたと今になって思う。その行為とは関係ないと思うが、しばらくして、さとうさんの制服はクラスメートと同じものになった。前の学校の制服がどうなってしまったのか、私はさとうさんに聞いてみたくて仕方が無かったが、ついぞ勇気が出せなかった。
↓イートン型ダブル前合せ制服(イメージ)
転校生の制服は、いつも学校で見慣れている制服とは異なっていたが、可哀想な様子は共通していた。
授業中に前に座っている女子たちの制服姿を観ながら、「可哀想に、可哀想に」と心のなかで叫んでは自分の性器を擦るという行為は、小学校5年生ごろになるとほぼ日常化していた。
男子の制服は短パンだったから、椅子に座った状態で性器をパンツから出して、左側に出す。そして、自分の着ている制服上着の裾を性器に被せるようにして、その上から性器を擦るというやり方が定着していた。
自分の制服上着の裏地を性器に押し当てて擦りながら、女子生徒の制服を眺めていたことになる。こう書くとただの変態だが、当時は純粋に女子の制服が可哀想だと思っていたに過ぎない。
あの日、校庭で惨めに虐待されていた上着を哀れんでいる最中に、何かの啓示であるかのごとく「ジ~ン」という現象に遭遇したためであろうか、制服を哀れむことと性器を擦ることが結びついてしまったのである。条件反射の典型例だろうか?
さて、ある日、いつものように授業中に女子の制服を見ながら、股間をまさぐっていてジ~ンに到達すると、なにやらどろっとした液体が漏れ出していることに気づく。その後、たびたび同じようなことが起こるようになった。精通だった。
しかし当時はそんなことお構いなしに、女子の制服を哀れみ続けた。
幼稚園の頃からだったか小学校低学年の頃からだったか記憶が定かではないが、私の家の隣にさゆりさん(仮名)という若い看護婦さんが住んでいた。さゆりさんは独身だったが子供好きで、非番のときなど暇さえあれば私とよく遊んでくれた。私も優しいお姉さんという感じのさゆりさんが大好きで、隣のさゆりさん宅にたびたび遊びに行っていた。以後、小学校卒業ぐらいまでの長い付き合いとなる。
さゆりさんは着物好きだったようで、普段着としてもよく和服を着ていたし、なにか行事のあるときなどは美しい晴れ着を着ていたのを見たことも度々ある。彼女の家にも、和服が壁に何枚も掛けてあった。私は子供心に、きれいな色柄の和服を見ることが大好きになり、そのすべすべした布地にも興味を持った。
何年生の頃だったか、ある日、和服を着たさゆりさんにふざけて抱きついたとき、何ともいえない生地のまろやかな感触、正絹の生地と樟脳(防虫剤)の香り、そしてさゆりさんが和服に篭めたらしい匂い袋の香りなどが交錯して失神しそうになった。やがてそれが病みつきになり、和服姿のさゆりさんに抱きつくのが楽しみになる。さゆりさんは特にいやな顔をしていなかったように思えたが、あるとき、母がそんな私を見咎めて、「お着物が汚れるからそんなことをしてはいけません」ときつく叱られたことがあった。
小学校高学年ですでに精通するようになっていた私は、ある日さゆりさんの和服姿を見たときに股間がムズムズしているのに気が付いた。そして、「その日」は突然訪れる。
いつものようにさゆりさんの家に遊びに行ったのだが、さゆりさんが「ちょっと急用ができたから、悪いけどしばらくお留守番しててくれない?すぐ戻るから」と言って、私を一人にして家を出て行ったのだ。
しばらく私は玩具でおとなしく遊んでいたが、ふと何気なく隣の部屋を覗いたときのこと。そこには壁一面に和服や襦袢、帯などが吊るされていたのだ。
以前、さゆりさんに「あまり触らないでね」と優しく言われたことがあり、子供なりに「着物って大事なものなんだ」と思っていたが、布地のしっとりした柔らかさや美しい光沢、かぐわしい香りに惹かれていた私は、多くの和服を目の前にしてすっかり舞い上がってしまった。
部屋に一歩踏み込むと、和服の香りが充満している。
私は一番手前に吊るしてあった綸子の訪問着(だったと思う。当時は種類などは分からなかった)にそっと顔を埋めてみた。
それから、実に自然に、私は誰に教えられたわけでもない行為に及んだ。半ズボンの前のチャックを開け、小さな陰茎を取り出すと、そっと優しく訪問着の前裾にタッチ。今から思えば、無意識的な行為だが、その理由は分からない。
てろんとした柔らかい生地の訪問着に顔をうずめ、ソファにあった固めのクッションを股間に挟んで力を入れると、ジ~ンとした感触が全身を駆け巡り、頭がぼぅ~っとなった。その時もすごく気持ちよくて何度も「ジ~ン」を繰り返す。クッションを訪問着の裾で包んで股間に挟んだりもした。
そうやって楽しんでいるうちに、訪問着がハンガーから外れて、頭の上にどさっと落ちてきてしまった。私は訪問着にすっかり包まれたような状態になり、生地の感触と香りが怒涛のように襲い掛かってくる。本当に失神寸前になり、すっかり陶酔した。
訪問着にとってみれば、相手が子供とはいえ、男性の股間という不気味なものを押し当てられ、さぞかし嫌な気分を味わったことだろう。子供に好き勝手に弄ばれる哀れな訪問着・・・。
そんな訪問着に包まれているとき、ガチャッと玄関のドアが開いて、さゆりさんが帰ってきた。
さゆりさんは、訪問着に包まれている私から訪問着を剥ぎ取って、「どうしたの~?」と聞いてくれた。ぼんやりしている私を見て驚いた様子でしたが、特に叱られることも無く、半べそをかいている私をいつものように優しくなだめてくれたのだった。ただ、訪問着をさっと点検し、シワになっている部分を見つけて、ちょっと悲しそうな顔をしていたのを覚えている。もしかして、シミが付いていたのかもしれない。
しかし、これに味をしめた私は、さゆりさんに抱きつくだけでは物足りなくなり、隙を見つけては壁に吊るされている和服たちにもタッチするようになる。股間に押し当てるとまではいかなくとも、触りまくったり顔を埋めたりして和服の生地の感触を楽しんでいた。もし和服たちに表情というものがあれば、私が遊びに来るたびに、みなサッと青ざめていたに違いない。しかしさゆりさんも私のこうした「悪戯」に気づき始めたようで、私を一人で家に残すことはほとんどなくなるのだった。
そうこうするうちにさゆりさんは結婚することになり、引っ越してしまう。私は優しかったさゆりさんと、優雅な和服たちが恋しくていつまでも忘れられなかった。今でも和服の香りを嗅ぐと当時のことが蘇ってくる。
中学生になってゴミ倉庫から和服を入手したときは、さゆりさんの和服を思い出して夢中で愛撫していたものだった。
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最終更新日:2024年11月16日
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