民族衣装

ブータン王国 Kingdom of Bhutan

ブータンの女性が日常的に着用している民族衣装が、キラとテュゴ(テゴ)だ。

ブータンでは伝統文化を守るために、公の場では常に民族衣装を着ることが義務付けられている。

 

キラ(Kira)はフル・キラとハーフ・キラの2種類あり、フル・キラのほうが本格的で胸元から足元までを隠すように着る。ハーフキラはウエストから足元までだ。外見上は、フル・キラは胸から足元までを覆うロング丈のストレートワンピースの形状、ハーフ・キラは腰から足元までを覆うロングスカートの形状だが、いずれも長方形の1枚の布を巻き付けて着用しているだけであり、いずれもホリゾンタル(水平)のストライプ柄が多い。

 

フル・キラのほうは着付けの際、コマ(Koma)というチェーン状のブローチ(留め具)を必要とする。キラを体に巻き付けてコマで留めたら、ハイウエスト気味の位置に帯(ケラ:Kaera)を巻く。帯をきつく締めあげたら、挟み込んで留める。

ハーフ・キラのほうはコマを必要とせず、ウエストの位置に巻いて上から帯を締める。留め方はフル・キラと同じだ。

 

紹介の順が逆になったが、着付けとしては、上半身にウォンジュ(ワンジュ:Wonju)というブラウスを着るのが先だ。ウォンジュは着丈は短めだが、袖は手先を隠すほどの長さがある。

 

ウォンジュとキラを着用したら、ウォンジュの上にテュゴ(テゴ:Tego/Toego)と呼ばれる上着を羽織る。テュゴはウォンジュに似た形状で、短い着丈と手先まで覆うほどの長い袖が特徴だ。袖先は、ブラウスのウォンジュと上着のテュゴの袖を重ねて腕まくりするように折り曲げる。この民族衣装で袖先に見えているのは中に着ているウォンジュなのだ。襟元に覗いているものも同じである。この両者の色のコントラストが美しい。

テュゴの前合わせは開けたままにすることもあるが、閉じる場合はブローチまたは安全ピンなどで留める。基本的には和服と同じ右前で着るが、特にどちらが上でなければならないということもないらしい。

なお、ウォンジュとテゴが一体化したものもあるようだ。つまり襟と袖先に別布が付いていて、着るとあたかも重ね着しているように見えるデザインである。

 

正式な場に出るときは、すべて着付けた上に、肩にラチュ(Rachu)という帯状の布を掛ける。落とさないよう、端っこを背中で帯(Kaera)に挟む。

 

キラは厚手の織りの生地が基本で、一枚の大きな布を縫い合わせて作られている。手織り、手刺繍のものは高価で、機械織り、プリント柄のものだと安くなる。

上着のテュゴにはサテンの光沢がきれいな生地で作られているものも多い。

素材はシルクやポリエステルなどがある。テュゴはシルクサテンや控えめな光沢がきれいなシルクブロケードがよく見られる。ちなみに、キラもウォンジュもテュゴも単衣で仕立てられることが普通で、一部のテュゴを除いて裏地の類は付いていない。


↓典型的なブータンの民族衣装で、上に着ている青い上着がテュゴ(テゴ)で、襟と袖口に覗いている赤いブラウスがウォンジュだ。

下にロングスカートのように付けているのがキラと呼ばれる衣装である。

画像:WEARABOUT

↓それぞれの女性が、テュゴ(テゴ)とウォンジュの色の組み合わせや、上下のコーディネイトに工夫を凝らす。

上衣は光沢のある生地が使われているものが多く、それだけで目の保養になる。



↓ブータン王国のロイヤルブータン航空(ドゥルックエア)のCA制服は、伝統民族衣装の制服を着用している。



テュゴ(上着)とウォンジュ(ブラウス)は別々に仕立てられ、重ねて着用される。袖口は、ウォンジュごと折り曲げ、襟も出して着る。



画像:メルカリこりん-2500



ハーフ・キラの5点セット。

↓上着のテュゴ(テゴ)とブラウスのウォンジュを重ねてきて、袖を折り曲げて着る。

↓上着のテュゴ(テゴ)は、前開きだが、ボタンの類は無く、ブローチなどで留める。


↓テュゴの生地は、チャイナドレスに似た光沢のあるサテンが使われることが多い。

↓テュゴの下に重ねて着るブラウス(ウォンジュ)も光沢がある薄手の生地だ。着丈は短いが袖が長い。


↓ハーフ・キラは一枚の布で、サイズは幅245cmx着丈102cm。これを下半身にスカートのように巻き付けて着る。水平方向のストライプ柄がポピュラーだ。

↓キラをウエストで締める帯(ケラ)は、日本の半幅帯よりも少し狭い。留めるときは結んだりせずに帯に挟むだけである。


↓寺院に行くなどフォーマルな場に出る際に、清掃として肩にかけるラチュ。

↓荘厳な刺繍がフォーマル感をいっそうアップする。

画像:メルカリLOMA



ブータン民族衣装の着付け

着付けと言っても、日本の和服ほど複雑ではなく、必要とするアイテムも多くはない。下半身のシルエットは和服に少し似ているが、右側の合わせ部分が特徴的だ。少々大きく脚を広げても、生脚が見える構造になっていない。

着付けの動画を見ると、当たり前だが、ブータンの女性たちが慣れた手つきで衣装を扱い、段取りよく着ていく姿が美しい。女性が嬉しそうに、そして少しはにかみながら着ていくのも微笑ましい。このような動画は、日本人が見るより、ブータンの男性が見るほうが欲情的なのだろうか。

<フル・キラの着付け>


<ハーフ・キラの着付け>


親から子へ、子から孫へと受け継がれていくことがあるのも、日本の和服に似ている。

伝統衣装であるが、ファッションデザインは年ごとに異なり、着付けの流行も微妙に変化するそうだ。


ブータン舞踊(Butanese dance)