柔道 寄稿

2024/03/10 けんた様より寄稿

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女子柔道部における、柔道着の処分に関する研究と考察(1)

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柔道の試合においては、柔道着に選手自身の所属チームや氏名を、ゼッケンや刺繍で明示することが求められる。名前を名字にするかフルネームにするかは任意だが、多くの選手は自身の誇りからフルネームを刺繍する。

柔道は女子選手同志が身体を絡ませて技をかける競技ゆえ、畳や選手の身体同士が擦れていくうちに、柔道着は黒ずみ、傷んでくる。傷みが目立ったり、敗れた柔道着は当然ながら処分されることになる。

下着と同じように女子選手が生身で着用している衣類であり、選手自身の氏名等が刺繍されているので、そのままの状態でゴミとして出すのは抵抗がある人もいるだろう。ゼッケンは剥ぎ取ることができるだろうが、胸や裾に刺繍された糸は固着し、容易に外すことはできない。そのため、多くの場合が妥協し、そのままの状態で手放される。

古布のリサイクルという観点では、柔道着はリサイクル不可であり、自治体では可燃ごみで処分することを推奨している。役目を終えた柔道着の多くは、可燃ごみとしてクリーンセンターで灰になっているだろう。

資源ごみとして他の衣類とともにゴミ袋に詰め込まれ処分されたり、リサイクルショップに持ち込まれた品も同様に、売値がつかなかったり、廃棄されることが想像されるが、最近の研究で、そうでないことがあきらかになった。

  

 <図1:ゴミ袋に詰め込まれて廃棄処分される部活用柔道着>

出典:オリジナル画像

画像:けんた様


↓下図はオークションサイトで実施に出品されていたT京大学女子柔道着である。研究資料として一部伏せたが、実際はフルネームが晒されたまま公開されている。1週間の出品期間の間、女子衣類を狙うハンターたちに、まじまじを眺められた状態で商品棚に陳列されていたことになる。

<図2-1:オークションに出品されていた女子柔道着>

出典:ヤフーオークション

<図2-2:脇部分の擦れ具体を詳細に提示した商品写真>

出典:ヤフーオークション


古着の詳細情報としては自然であるが、暗にブルセラショップのような使用感=商品価値を表していることは言うまでもないだろう。

<図2-3:オークションに出品されていた女子柔道着>

出典:ヤフーオークション


<図2-4:オークションにはあちこちに使用者の刺繍が打たれている>

出典:ヤフーオークション

↓こちらはT海大学の女子柔道着である。

可愛らしい桃色の背景が用いられているが、女子選手が使用したことによる黄ばみや異臭について、ジャンク品としての一般的な表記を行っている。

画像:けんた様


★図2-1:オークションID: k431763073
 商品名:帝京大学 teikyo 帝京大 私立 女子 柔道部 支給 スポMIZUNO ミズノ 白 ホワイト 柔道着 上下セット 激レア品 上2.5 下3.0
★図2-2:オークションID:p1076519196
 商品名:帝京大学 女子柔道部 ミズノ MIZUNO 白 ホワイト 柔道着 上下セット 別注タグ付
★図2-3:オークションID c782319813
 商品名:帝京大学 teikyo 帝京大 私立 女子 柔道部 支給 MIZUNO ミズノ 白 ホワイト 柔道着 上下セット 激レア品
★図2-4:オークションID:p1044429525
 商品名:帝京大学 女子柔道部 ミズノ MIZUNO 白 ホワイト 柔道着 上下セット 別注品

<資料画像>
↓東海大学
胸には東海大学伝統の刺繍マーク、側面には東海大学のロゴがあしらわれている。

画像:けんた様



↓日本体育大学
胸には日体の刺繍マーク、側面には日体大シンボルであるライオンのロゴが刺繍されている。

画像:けんた様


↓帝京大学
胸には東海大学伝統の帝京マークが刺繍されている。


出典:オークションID c782319813
 商品名:帝京大学 teikyo 帝京大 私立 女子 柔道部 支給 MIZUNO ミズノ 白 ホワイト 柔道着 上下セット 激レア品

実際オークションにおいては、開始価格はボロ布同然の100円スタートだが、大量の入札によって競られ、最終的には2万円台の高値をつけている。購入者の多くがマニア向け用途であることを示しているのではないか。

本研究においては、これら柔道着が出品されている現状に加え、取材の中で詳細な足取りを追うことができたこのT海大の柔道着を例に、購入者の手にわたった後の使用済柔道着がどのような運命をたどるのか取材・研究し、複数回にわけてレポートする。

 

・補足情報:

 柔道着への刺繍においては、年齢や性別による、書体や色の規定は特に見当たらなかった。多くは金色、黒色、銀色、赤色、ピンク色で自由に刺繍できるようだ。

(うら爺コメント:たいへん濃厚なご寄稿をいただき、ありがとうございます。柔道着については最近あまり注目していなかったので、新鮮な思いで拝見しております。

衣類は不要になったら処分される運命ですが、柔道着はボロボロに使い込まれた挙句にポイされてしまいます。しかもけんた様のレポートの通り、可燃ゴミとして捨てられるのが一般的と知り、いっそう哀れさがこみ上げます。

制服だとネームが切り取られることがありますが、柔道着は残したままというのも可哀想な度合いが増す気がします。そのまま焼却処分になるならまだしも、ネトオクでさらしものになり、行きついた先でまともな使いかたをされなかった場合、校名やネームなどの属性も含めて凌辱されるのです。不明校のユニフォーム(制服)として惨めな余生を送るか、どこの誰の所有物だったのかが明らかにされてなお苛められるのか、どちらがマシなのでしょうか?自分がもし衣類だったら、共に過ごしていた女子の思い出をいつまでも留めておきたいと思います。たとえどんな辛い目に遭わされようとも、一瞬でも輝いていた日々を思い起こすと何とか耐えられるのではないでしょうか。

いずれにせよ、喜怒哀楽を共に経験した柔道着(衣類)を、不要になったからと言って手放してしまう気持ちがなかなか理解できませんね。2024/03/16)


2024/03/17 けんた様より寄稿

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女子柔道部における、柔道着の処分に関する研究と考察(2)

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 まずはもっとも多い廃棄処分について取り扱っていこうと思う。前回、柔道着は可燃ごみとして処理されることを記した。本当にそうであるか、実際に確認してみることにする。

 

まずは、女学生が使用していたと思われる柔道着をオークションサイトから調達した。今回はT海大学のものを利用する。

 

<図1:T海大学の柔道着>

 

実際に到着した柔道着を見てみよう。

商品説明通り、選手の学校名や名前がしっかりと刺繍され、衣類はまだT海大学の柔道着であることが主張されたままになっていた。確かに生地はくたびれ、黒ずみや毛羽立ちは目立つものの、刺子生地は頑丈がゆえ、穴が空いたり敗れているということはなかった。学生は部活動の引退や学校卒業などのイベントで不要になるのはわかるが、まだまだ使えそうな品だけに、もったいない。

選手に資源ごみとして処分され、ようやく新しい持ち主の手にわたったかと思えば再び処分されることになると思うと心苦しいが、研究のために実践していこうと思う。

 

いきなりだが、届いた柔道着を資源ごみとして処分してみる。処分方法はシンプルで、自治体の廃棄区分ルールに基づいて廃棄する。ただし、今回は柔道着が「可燃ゴミ」であることはわかっているので、一般的なゴミ捨て場に放置するのは忍びないので、他の資源ごみ(古紙や缶など)といっしょに、代行業者に差し出すことにした。

 

<図2:回収不可のシールまみれになった女学生の柔道着>

 

結果は写真の通り、他の資源ごみは資源として処分されたが、柔道着だけはリサイクル不可として差し戻された。回収不可を示すタグには、明確に「燃やすごみ」であることにチェックが入れられており、柔道着が可燃ごみであることが改めて実証された。

(ここで融通を利かせられ、回収されては話が終わってしまうため、ある種安心した。)

 

次は指示通り、柔道着を可燃ごみとして処分する。筆者の土地柄もあるだろうが、人目もあるので、本レポートではルール通り廃棄可能な場所で、最も"荒れている"場所を選定した。

(なお本レポート作成に当たり、不法投棄に該当する行為は行っていないことはあらかじめことわっておく。)

 

処分後、ゴミ回収車が回収する様子をレポートしたかったのだが、常時ゴミ捨て場の前で待機するのは不審者と思われかねないため、定期的に処分場には足を運んでいた。

ただ、目を離した隙に、第三者に持ち去られないかは気がかりであった。案の定、何者かによって捨て場が物色され、なぜか柔道着が露出した状態になっていた。

 

<図3:野ざらしにされた柔道着>

 

持ち去ろうと考えた末にやめたのか、あるいは落とし物と間違えないよう親切な方が移動させたのかは定かではないが、いずれにせよ、選手の刺繍が掲げられた状態で、ゴミ捨て場に野ざらしの状態で放置されていた。非常に可哀想な光景であったため、何枚か写真に残しておく。

 

<図4:野ざらしにされた柔道着(遠目で追加撮影)>

 

遠くからディーゼル音が近づき、ゴミ収集車がやってきた。柔道着が逃げることもできず、ただただゴミ捨て場で。

 

<図5:ゴミ収集車とゴミとして放置された柔道着>

 

回収員がトラックから降りてきた。他の収集箱から手際よくゴミ袋を回収し、パッカーに放り投げていく。生臭いニオイが漏れないようしっかり結ばれたゴミ袋が、パンパンと破裂しながら、回収者の飲み込まれていく。

そして、回収員は柔道着に目をやった。いよいよ柔道着がゴミ収集車に飲み込まれる時である。

製造され生を享け、特注の部活刺繍を施され、学校に輸送され、楽しみに待つ選手の手にわたり、つらい稽古をともにした柔道着。くだびれたその姿から、選手は新しい柔道着を新調し、いつしか見放され、ゴミとして処分される。

回収員はまるで落とし物のように放置された柔道着に一瞬ためらったが、それが可燃ごみであることを素早く察知し、ゴミ収集車の投入口に放り込んだ!

 

<図6:投入口に放り込まれる柔道着>

 

柔道着は異臭と放つゴミ袋と混ざりながら、回転板の上に乗せられた。

そして、モーター音とともに、油圧プレートが柔道着とゴミ袋をメリメリと押し潰した。黒帯は、うまく回転板に乗らず、投入口から地面にはみ出ていたが、プレス機に引き込まれ、ズルズルとゴミ収集車の中に引きずられていった。

柔道着が押し潰されているのを何ら気にすることなく、柔道着が放り込まれるのが最後だったため、作業員は淡々と後片付けを始めていた。

 

しかし偶然にも、柔道着が再び投入口に現れた。これは想像だが、どうやら柔道着の袖が回転板に引っかかったようで、回転板を一周して投入口に戻ってきたようだ。まるで、成仏してたまるか灰になってたまるかと、柔道着が抵抗しているようだった。

 

<図7:回転板にひっかかり空転する柔道着>

 

ゴミを飲み終え、空転する回転板とともに、柔道着も虚しく回転していた。回転するたびに投入口やタンクの側面に擦り付けられるようで、生ゴミから排出された汚水や汚れを吸水し、刺子生地がどんどん黒ずんでいくように見えた。それでも、自身がT海大の選手の柔道着であることを示すように、黒ずんでいくゼッケンを掲げて、かすかな存在を示していた。

作業員はゴミ収集車に乗り込むと、柔道着とともに走り去っていった。

 

もうあの柔道着を二度と見ることはないだろう。袖が引き裂けるまで、回転板とともに回り続け、今頃は、ごみ焼却施設で、他の可燃ゴミと共に、ごみピットの中でクレーンに釣り上げっれるのを待っている、いやもう焼却炉に放りこまれ、灰になっているかもしれない。

この柔道着は、確かに柔道着が可燃ごみで処分されることを立証してくれた。

 

補足:

撮れ高の関係もあり、本撮影は2回行っております。別の検証回でも、圧縮式のゴミ収集車のT海大学の女子柔道着が飲み込まれていきました。こちらも柔道着の最期を視認することができました。何度もプレスを繰り返され、他のゴミは破砕・圧縮されていく一方で柔道着は布の特性を活かし、何度も盛り返し、プレス機の隙間から、T海大のゼッケンを通してその存在を示してくれました。

 

<図8:プレス機の隙間から存在を示す柔道着>

 

本検証のために可燃ごみ逝きとなった、2着分の柔道着の御冥福をお祈りするとともに、柔道着に対し感謝の意を示します。

次回は、廃棄処分以外の柔道着の末路をレポートしたいと思います。


<図1:T海大学の柔道着>

<図2:回収不可のシールまみれになった女学生の柔道着>



<図3:野ざらしにされた柔道着>

<図4:野ざらしにされた柔道着(遠目で追加撮影)>



<図5:ゴミ収集車とゴミとして放置された柔道着>

<図6:投入口に放り込まれる柔道着>



<図7:回転板にひっかかり空転する柔道着>

<図8:プレス機の隙間から存在を示す柔道着>

画像(上8点):けんた様


(うら爺コメント:本当に可燃ゴミに分類されてしまうんですね。まだじゅうぶんに活用できそうなきれいな状態に見えるのに、持ち主の判断により運命が左右されてしまいます。なんとか再利用される道はないのでしょうか。べたべた貼られたタグの「燃やすごみ」に、きわめて事務的に入れられたチェックが残酷な宣言に見えます。柔道着にとっては生死を分けるチェックマークです。

ゴミ回収の日、物色された形跡があってもなお、柔道着は不要とされ、放置されてしまいました。あちこちのゴミ集積所で、このように衣類が引きずり出されて野ざらしになっている姿を目にしますが、実に哀れで堪りません。

回収される様子を撮るのは難しかったと思いますが、今回の画像でその痛々しさがよく伝わってきます。パッカー車へ圧倒的な力で引き摺り込まれ、生ゴミと共にかき回され、奥へ詰め込まれていきます。それでもときどき姿を現すのは、何とか助けてほしいとあがいているのでしょうか。過酷な状況のなかでさえ、柔道着は誇りを失うことなく、いやむしろ最期まで所属大学と選手名をこの世に留めようとするがごとく、刺繍を見せつけています。その姿が立派であればあるほど、どうして処分されなければならなかったのかと、湧き上がる怒りと悲しみを抑えられません。

もし刺繍がなかったなら、柔道着として再利用されたのでしょうか?お下がりされて、ほんとうにくたびれて使えなくなるまで使われ続けたのでしょうか?だとしたら、柔道着に刺繍するのを禁止してもらいたくなりますね。2024/03/18)