宴会の余興に供される衣類

制服や和服など、本来はきちんと想定された着用者に正しい目的で着用されるべきものなのに、宴会などの余興で、面白おかしく演じるための小道具にされてしまうことがある。

演技者たちは、ステージを盛り上げることに懸命で、使われる衣類の扱いも乱雑なものにならざるを得ない。

 

<シチュエーション別>-目的外使用

 


中学時代の出し物

修学旅行での余興で寸劇をやった女子のグループがあった。

そのなかでドレスを表現するために、ひとりの女子が数名の制服スカートを重ね穿きして登場した。スカートがオモチャにされているように見えて、胸が痛んだ。

私はというと、友人と二人で二人羽織を披露した。蕎麦を食べる様子を二人で演じるもので、友人が女性用の和装の羽織を持参してきてくれ、私が前で顔を出し、友人が後ろで手を出す役だった。

蕎麦は本物のザル蕎麦で、私は面白い演技をするために箸をわざと顔に当てさせたり、蕎麦をこぼしたりした。羽織は汚れても構わないということだったので、思い切った演技をしたわけだが、羽織は蕎麦や汁で汚され放題だった。いま思えば可哀想なことをしたものだ。


結婚披露宴

学校の制服は、余興の衣装によく使われる。

結婚披露宴に、新婦の友人代表の女子数名が制服姿で登場する。新婦の高校時代の同級生だろう。だから、制服も出身高校のものだ。今でも制服を取ってあること、それが今日、この日のために着られるようにダイエットに励んだことなどが紹介され、一曲歌って終わる。そのあと脱いだ制服は雑に丸められてバッグに詰め込まれるのだ。


同窓会

同窓会で制服姿が披露されることがある。

卒業して年月が浅ければ、制服も取ってあり、サイズアウトも心配せずに着用もできるだろう。しかし、数十年ぶりの同窓会でも、受付係が無理に着たり、余興で着用されることも珍しいことではない。

いい年をした年配者に着られる制服は、若い子とは動きも違うであろう。

中には、自分の制服がなくて、学校に保管してあるものを拝借してきたり、娘の制服を借りてきたりする者もいる。制服が気苦労が耐えない。


忘年会

会社などの忘年会で使われる制服は、かなりの覚悟がいる。

同僚の制服を着たりすることもあり、いままで縁がなかった人に袖を通される。

酒の席なので、飲食物で汚れたりもする。さらには、男性が女装のために使ったりもする。脱いだ後は雑にわきに放り出され、適当に紙袋に入れられたりする。

また来年の忘年会に使うために、衣装として保管されることもある。当然、そんなものはクリーニングなどされないのだ。


旅館の風呂上がりに浴衣をチャイナドレスにすり替えてみたという。チャイナドレスには何の罪もないのに、男性の素肌に着られて、最後は投げ捨てられている。玩具にされて終わりだ。

こういう扱い方は許せない。チャイナドレスがどれだけの屈辱を味わったかを思うと胸が潰れる。