制服のモデルチェンジというと、フルモデルチェンジとマイナーチェンジに分けられる。
フルモデルチェンジは、制服のイメージやデザインを根本的に見直して、すっかり変更してしまうことである。マイナーチェンジというのは、外見上のイメージやデザインを残すか、そのまま踏襲して一部に変更を加えることである。
フルモデルチェンジされてしまうと、旧型はお下がりで使われる道が立たれてしまう。リユース目的で回収され保管されていたものも、再び使われる道が立たれてしまい、そのまま処分されることになる。ブルセラルートに流れたものでも、旧型となると価値がやや下がるのが普通だ。
マイナーチェンジには、その内容に幅があるが、外見からはほとんど区別できないような仕様変更ならばお下がりで使われても問題は無いが、ボタンの数や襟や裾の形状、表地の色合いなどが変わってしまうと、フルモデルチェンジとあまり変わらない扱いを受ける。
また、公立学校を中心に、制服自体を廃止するところもある。この場合、完全に廃止するパターンと、常時着用義務化していたものを式典のみ着用義務化、または標準服として自由着用にするパターンがある。
入学に合わせて作られた制服は、これから始まる学校生活でお役に立てるよう頑張ろうと張り切っているはずだが、式典のみの着用だったり、自由着用校の生徒の気まぐれで着てもらえたりもらえなかったりすると、ほとんど新品状態のまま卒業式を迎えて、ゴミ箱行きとなるものもある。出番なく処分されていく制服たちの無念さはいかばかりだろうか。
昨今、少子化の傾向にあって、特に私立学校では生徒数確保に必死だ。
その対策として、カリキュラムの改善や進学率アップ、部活動の成果露出など様々に工夫されているが、生徒たちが日々着用する制服も学校の魅力を高めるということが認識されはじめて久しい。
そのきっかけとしては、女子校が共学校になるとき、創立50周年などの区切りを迎えるとき、PTAから強い要望があるとき、経営陣が刷新されるとき、学校の統廃合が行われるときなど様々である。
瀧野川女子学園や梅花のように、制服のフルモデルチェンジを繰り返して、今の制服デザインに落ち着いた学校もある。試行錯誤の末、あまりにデザインに凝りすぎて、突飛な姿に走り、苦い経験をしたところもあるのだ。
いちど有名デザイナーに依頼してしまうと、すぐに変更することは難しくなり、不評の中で数年は使われることになる。ダメダメと罵倒されながら着続けられるほど制服にとって辛いことは無かろう。人間だったら精神に支障をきたしてしまう。
一方で、神戸松蔭や武庫川女子、聖心女子学院のように伝統ある制服を大きく変更することなく、現在に至っている学校もある。数十年前に使用されていた制服でも、そのまま現在の生徒が着用しようと思えばできるのだから立派なものだ。
ただ、同じデザインでも実物をつぶさに見ると時代に合わせて微妙にマイナーチェンジしている。生地の改良により格段に軽くて、滑りも良くなっていたりするし、裁断パターンや縫製の工夫によって着心地や動きやすさも向上したりしている。さらに、スナップボタン留めからジッパーに変更したり、ジッパーの位置を脇から前にしたりで着脱も容易にならしめている。丸洗い可になってメンテも楽だ。
・梅花中学校/高等学校
2017年度より新制服がデビューした。
冬服は中学校と高校でブレザーが異なる。夏服は共通だがリボンのみ異なる仕様だ。
倉敷の製造メーカーと一緒に公休先端素材を使って一から作り上げたこだわりの制服とのこと。美しく、軽く、伸縮性があり、汚れをはじき、しかも洗濯機で洗うことができる。
夏服は涼しく、紫外線カット効果がある上、透けにくくなっていると至れり尽くせりだ。
https://www.inter-edu.com/special/takinogawa/profile/uniform/
なお、制服がフルモデルチェンジしても、旧制服で入学した生徒は卒業するまでそのまま着用するので、上級生と下級生で新旧制服が混在する期間が生じる。たいていの学校では、旧制服で入学した生徒が、新制服を着用することは許されていない。
<制服廃止の例>
・法政大学国際高等学校(旧法政大学女子中学校高等学校)
2013年に制服を事実上廃止したが、式服という形で残した。ただし、入学式などの式典にも着用義務はなかった。にもかかわらず、入学式では半数以上が式服で、卒業式になると9割が式服で参加していたという。式服を持っていない生徒は下級生に借りて卒業式に出席していたらしい。
2018年に男女共学化により、法政女子時代の式服は完全に廃止となる。
(ブレザータイプで式服という概念は存続。)
公立学校のフルモデルチェンジで分かりやすい例といえば、旧来のセーラー服とジャンパースカートだった制服を、ブレザーとチェック柄プリーツスカートに変更するというものだ。
また、一時期主流だった上着とボックスプリーツスカートというスーツ型の制服も、同様にブレザータイプに変更されることが多い。
旧制服がスーツ型だったものをセーラー服型へ変更するという例は、昨今ではほとんど聞かない。
なお、生徒間の経済的な格差を考慮してか、在校生が新制服へ着替えることは禁止している学校がほとんどである。逆に新入生が姉などのお下がりを着ることは許可されることが多いと思うが、女子にしてみれば、やはり新しいデザインの制服が着たいと思うだろうし、そんな乙女心を感じ取ってくれる親も多いだろう。ひと昔前は、旧型のお下がりを着ている生徒は、制服が買えない貧乏人と苛められたものだが、昨今はどうだろうか?
<フルモデルチェンジの例>
・京都ノートルダム女学院高等学校
1952年の創立以来64年ものあいだ受け継がれてきた伝統の制服を2016年度よりモデルチェンジした。
旧制服は全体的に茶色一色のイメージだったが、新制服にもなんとなく同じような色合いを取り入れ、また、ジャンスカも残している。
https://www.notredame-jogakuin.ed.jp/jr/life/uniform/
出典 http://www.notredame-jogakuin.ed.jp/wp/wp-content/themes/notredame/images/uniform/pic_001.jpg
・会津若松ザベリオ学園
幼稚園から高校まで同じ敷地内に設置している私立校である。
女子校だったが、2011年に中学校に男子を受け入れ、翌2012年に高校で男子を受け入れて全学で男女共学となったことをきっかけに、女子制服も一新した。
少子化の影響で、女子校を共学校に変更する例は、近年かなりの数に登っている。当然のように、それまで使われていた女子制服はモデルチェンジされてしまう。女子制服はそのまま生かして、男子制服のみ追加すればよいように思えるが、諸般の事情により女子制服は救われない。
http://www.aizu-xaverio.ed.jp/index.html
旧制服はイートン型の上着にフレアスカートのジャンスカ。一見すると古風な印象だったが、優雅なフレアのジャンパースカートが見られなくなったのは、ファンの一人として実に惜しい気がする。
マイナーチェンジというのは主に2種類あって、外見上からはほとんど見分けが付かないものと、全体的なイメージやデザインなどは保存したまま改造を加えるものがある。たとえ生地質が違うだけのわずかな変更であっても、生徒たちにとっては別物の制服となる。
なお、これらの仕様変更は新入学生から採用され、たいていの場合、在校生の制服変更は行われない。
前者の例としては、
・表地および裏地の素材変更(例:純毛→混紡)
・洗濯方法の変更(例:ドライオンリー→水洗い可)
・ボタンの素材変更
・スナップボタン留め→ジッパーへ変更
・セーラー服のジッパー位置の変更(例:脇開き→前開き)
・裁断パターンや縫製方法の変更(例:タックやステッチを入れる)
・裏地の変更(例:スカートに裏地を付ける、上着を総裏から背抜きにする)
・シルエット変更(例:上着の身幅を詰める、ジャンスカのウエストラインを上げる)
・上衣の着丈変更(例:上着の丈を長くする)
・メーカー/制服店の変更
後者の例としては、
・色の変更(例:明るいグレー→濃いチャコールグレー)
・上着の襟の形状変更(例:イートン→ノッチドラペル)
・上着の裾の形状変更(例:角→丸)
・上着のボタン数や合わせ(例:ダブル→シングル)
・セーラー服のスカーフ/タイの形状変更(三角スカーフ→パータイ、スカーフ→共布タイ)
・合服の形状変更(例:ジャンパースカート→ベスト+スカート)
・スカートのチェック柄パターン変更
・スカートのプリーツ数変更
・校章刺繍やエンブレムの形状変更または取付位置変更
これらのマイナーチェンジは冬服のみ、または夏服のみ限定で行われることもある。
また、たとえば、今まで無かった中間服(合服)や盛夏服などを新たに採用するなどの場合もある。昨今では、女子制服にパンツスタイルを追加することも多くなっており、中高から女子大まで幅広く見られる傾向である。しかし、ある制服メーカーのアンケートによると、スカートを着たいという生徒のほうが圧倒的に多いようである。個人的にも、女子生徒にはスカートを着ていてもらいたい。
<マイナーチェンジの例>
・國際基督教大学高等学校(ICU高校)
https://icu-h.ed.jp/news/archives/181119_002024.html
創立40周年を期に、2019年度より制服のマイナーチェンジを行う。
ジャケット・ボトムの生地素材を変更し、色の調整を行う。
また、パターン、シルエットを見直す。
・神戸松蔭中学校高等学校
http://www.shoin-jhs.ac.jp/life/event/y2013/y2013_seifuku/y2013_seifuku.pdf
2013年9月30日付け「制服の機能改善について」
冬服の素材をウール70%の混紡とする。
夏服の素材は透け防止、UVの軽減、制菌加工を施したものとし、脇汗パッドを採用する。
ヒダが崩れないようヒダの奥にステッチを入れる。
・ 札幌聖心女子学院中学校高等学校
https://spr-sacred-heart.ed.jp/school-life/uniform/
2019年4月から、より現代的なシルエットにブラッシュアップするため、生徒の体系に合わせてシルエットやサイズ企画を見直す。
ブレザー/ベストはプリンセスラインを入れ、身体にフィットするシルエットにし、袖丈も長めに。
スカートは12本片ヒダから20本車ヒダに。
肩回りの裏地に伸びる素材を使用し、着心地アップ。
・大阪府立泉陽高校
着心地を追求するためにマイナーチェンジされる例は、私立校に限ったことではない。
府立泉陽高校は女優の沢口靖子も通っていた進学校だが、2018年度から、冬セーラー服上衣のジッパー位置が左脇から前開きに変更された。新制服はジッパーを開けるときに上から下へ引くので、胸元にはホックも新設されている。
セーラー服という形状を無くさなかったという点でも評価したい。
・聖カタリナ学園高等学校
(旧聖カタリナ女子高等学校)
2003年、女子校時代にイートンジャケットスタイルからブレザースタイルに変更。
2016年に看護科以外を男女共学としたことをきっかけに学校名を改称し、女子制服のブレザーもマイナーチェンジした。
ブレザーのみ仕様変更を行う。
最新素材を採用。
ボタンを3つから2つへ。
袖ボタンをなくす。
胸ポケットに校名刺繍が入る
ラペル幅を細く。
学校制服は一式そろえるとそれなりに高価なものなので、おさがりという形で再利用(リユース)されて受け継がれていくことが多い。その方法は、家庭内、知り合い同士、先輩後輩、学校経由、リユース店経由など様々であるが、制服がフルモデルチェンジされてしまった段階で、すべての制服ストックが一瞬にして不要品と化してしまう。
旧制服で入学した生徒が卒業するまでは需要があるが、彼女らが卒業式を迎えたとたん、卒業生たちが着ている制服も含めてすべてが行き場を失うことになる。
学校によっては、リサイクルやリユースと称して、卒業生から制服を集めて保管しているところがあるが、そこに並べられていた制服たちも一斉に処分されるのだ。
マイナーチェンジされた制服も油断できない。もちろんマイナーチェンジ後も、旧制服を着用することをほとんどの学校が認めている。新入生が新制服を購入せず、旧制服を譲り受けて着用することも多くの場合可能であろう。
しかし、素材やジッパーの位置の違いなど些細な変更ならまだしも、外見の変化を伴うものについては敬遠されがちであろう。となると、たとえば学校のリサイクル(リユース)ルームなどに保管されている旧制服は人気がなく、新制服から捌けていくことになる。
唯一残された旧制服の活躍の場があるとしたら、ボタンなどのパーツ取り用だ。補修のための生地取りをされることもある。いずれも二度とまともには着用されることは無い。
制作中
企業制服のモデルチェンジは、学校制服のそれに比べて残酷度がかなりアップする。
学校制服の場合は、モデルチェンジしても、在校生の制服は卒業までそのまま着用される。新一年生が新制服で、2-3年生は旧制服という混合のパターンは2年ほど続くが、入学生に購入された旧制服は卒業までは着てもらえる。たいていの学校では、モデルチェンジがあったからと言って、在校生が新制服を購入するのを禁じている。もちろん、これは制服のことを気遣っているわけではないが、結果的に無駄に制服が短命になるのを防いでいる。
一方、企業の制服、たとえば航空会社やレストラン、携帯電話ショップ、銀行など、主に接客を中心とした会社の制服の場合、モデルチェンジはある日突然やってくる。その日を境に、旧制服はすべて用済みとなる。耐用年数を越えてクタクタの制服もあれば、新入社員に使われ始めたばかりの新品同様のものもあるが、みな等しく処分対象とされる。中には、出番を待っていて未使用のままの制服も、そのまま処分の憂き目に遭う。新品タグつきでビニール袋に入れられたままのものがゴミのように扱われる様子は観るに耐えない。
ナース服 制作中
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最終更新日:2024年11月16日
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