入学式/卒業式

学校制服にとって、入学式は地獄の始まり、卒業式は御役御免を意味する。

もっと言えば、入学式から酷使される苦行の日々が続き、卒業式を迎えると処分される運命なのだ。通常三年間、中高一貫校などでは六年間、乱暴に着用され、雑に扱われる。おさがりやリユースシステムで後輩に受け継がれると、もう1ラウンドの苦行が待っている。

 

2-3月は制服にとって重要なシーズンだ。新入生の制服が大量に製作される。どの家庭に届けられるかによって、以後の苦しみの度合いも大きく変わる。同時に、卒業シーズンを迎えると大量の制服が不要品となる。

 

制服が無い小学校の卒業式では、進学先の中学校の制服を着用することも多くなっている。中学校の入学式を待たずに、小学校の卒業式がデビューとなる。

 

また、学校の教師や列席する母親も、ふだんはタンスで眠っているフォーマルウエアや和服を引っ張り出してきて着用するわけだ。



届いた制服

3月ごろ、「進学先の制服が届いた!」という話がブログやTwitterに大量にアップされる。箱に入ったままの制服や、着用した写真が載せられるが、気になるのは、「可愛い」というコメントと、「可愛くない」というコメントが入り乱れていることだ。

特に「ぜんぜん可愛くない」「ださい」「似合わなさすぎ」というコメントを読むと、それを見た制服がどんな気持ちになるのか。

親たちがアップするブログにはもちろん、「いつの間にかこんなに成長して、感無量」といったものが多く、制服については、サイズ大きめでブカブカとか、まだセーラー服に着られているみたいという程度のものだ。これから制服たちがどのように酷使されていくかを心配する声はない。

新しい制服は箱の中できちんと畳まれ、スカートのプリーツは仕付け糸で固定されている。これからどんな女の子に着てもらえるのか、期待と不安でいっぱいなのだ。生地の風合いもふっくらしていて、少しばかりハリがある。これが使い込まれるに従い、テカリを増していき、洗濯を繰り返されてくたびれていく。

そして、とりあえず期待と不安いっぱいで新しい家庭に迎えられた制服も、卒業式を終えると一瞬にして不要品扱いされ、運が悪いとクリーニングもされないまま長期間、放置されてしまうのである。

画像:ヤフオクmarutasho_0908


消耗した制服

卒業式を迎えた制服は、在学中に激しく酷使されてくたくたになっている。

全体にテカリが生じ、陽に焼け、縫い目は引っ張られ、型崩れし、ボタンの糸は抜けそうになり、擦り切れやほつれが生じ、シワと染みが付いている。

卒業式が終わったらクリーニングしてもらえるかどうかは、各家庭の考えや経済状況による。


憧れのクラスメートや先輩

卒業式後、女子が男子の制服のボタンをもらうという話は定番だが、女子が友人同士で制服を交換したり、後輩に譲って欲しいとねだられて譲ったりする場合もある。

女子校では、後輩が憧れの先輩の制服を貰い受けたりする。一式でなくともブレザーだけだったり、セーラー服の場合はスカーフだけということもある。

卒業式の朝に、生徒に着用されて出かけた制服は、もう元の自宅へ戻れないのだ。ただでさえ最後の日で不安でいっぱいなのに、ブレザーはブラウスやスカートと引き離されてしまい、セーラー服はスカーフを取られてしまう。寂しい話だ。


制服の処分

 そもそも卒業して不要になった制服をいつ捨てるのか。

ネット上のブログや記事を見ていると、式から帰ってきてすぐにゴミ箱に放り込んだ生徒もいるようで驚く。

 さらには、学校や先生に恨み・憎しみを持つ生徒の中には、自分の制服に八つ当たりをするかのように、ずたずたに切り裂くという例もあるようだ。制服には何の罪もないというのに。


卒業生コサージュ

ICU国際基督教高校

卒業生は胸に卒業生の目印としてリボンやコサージュを付ける。

卒業式当日は華やかな演出の小道具として輝くが、式のあと制服がすぐに処分されると、コサージュが付いたままゴミとして捨てられることもある。クリーニングされずに処分されたことの証明となっているように見えて、痛々しい。


守口市立庭窪中学校

画像:ヤフオクpine_remon

ネットオークションに出品されていた中古制服だが、卒業コサージュが付いたままになっている。ということは、卒業式の後にクリーニングなどのメンテをされることなく処分されたわけだ。



名護高校

60年間変わらなかった高校の制服が平成27年度よりモデルチェンジ。平成30年に旧制服最期の卒業生が出た。愛着のある旧制服を何かの形で残そうと考えたすえ、制服の生地でコサージュを作って卒業生の門出に花を添えることにした。

コサージュの花びらは女子生徒の夏服のグレーのスカートで、中心には男子生徒の学ランのボタンがあしらわれている。完成したのは320個あまり。

ちなみに、新制服はブレザータイプでKANKOブランドである。

https://kanko-gakuseifuku.co.jp/edu-uniform/modelchange/case_nago.html

 

画像:琉球朝日放送

http://www.qab.co.jp/news/2017030388404.html


旧制服(冬服)

画像:琉球新報2015/1/4

https://ryukyushimpo.jp/news/prentry-236806.html

旧制服(夏服)

画像:名護高校47期生同窓会

https://nago4849.ti-da.net/e5751543.html


画像:沖縄県立名護高校サイト

http://www.nago-h.open.ed.jp/post-9.html

画像:琉球新報2017/2/28 名護市議会・金城善英サイト

http://www.komei.or.jp/km/nago-kinjo-yoshihide/2017/03/04/164442/



卒業記念

卒業記念刺繍 熊取中学校

若いときにはツッパルことも必要だ。校則でがんじがらめにされていた生徒も、卒業式ぐらいは自己を顕示したいものだ。それで犠牲になるのは制服。

3年間、女子生徒のために尽くしてきたセーラー服も驚いたことだろう。制服業者に持ち込まれたときは、卒業式を前にして、クリーニング、そして再整備してもらえるのかと喜んだことだろう。

しかしそうではなかった。襟に付いていたラインが外される。そして、チャコペンで印を入れられたかと思いきや、なにやら機械に押し当てられて全身に刺繍針を打ち込まれたのだ。

太い針が前身ごろ、背中、襟、袖までくまなく刺繍糸を通していく。

当のセーラー服はいったい何が起こっているのか理解できないでいる。卒業式なのに、どうなっているの?

読んで面はゆくなるような言葉が刻まれ、にぎやかな模様が舞う。もはや制服ではない。自己主張の道具だ。


刺繍業者は容赦が無い。

裏地まで貫いた刺繍針は、そこに記名タグがあろうと素材タグがあろうと知ったこっちゃ無いのだ。もう制服として着られるものではない。外から綺麗に見えればそれでいい。

紺色一色だったツルツル光沢の裏地も散々な目に遭わされている。

女子生徒が在学中にセーラー服を着るとき、滑りが良いように、そして、着用中もスムーズな動きができるように張られたスベスベの裏地も、もう見る影も無い。刺繍だらけの裏側は波打ち、ざらざらの状態で、セーラー服も苦しそうだ。

このような状態になった制服は、もうお下がりで後輩に受け継がれることは無いだろう。

でも、卒業記念として、卒業生が永遠に保管してくれるはず。刻まれた言葉にうそは無いでしょう?

しかし、こんなものはしょせんお遊びだった。この制服はほどなくして手放されてしまうのである。 


卒業記念寄せ書き

卒業の記念に、クラスメートの寄せ書きを制服に行う。白い生地の夏服をわざわざ持参するか、あるいは冬服セーラー服に襟カバーがある場合はそれに書き込むことが多い。いずれにせよ、書き込まれた制服は、もう着用目的で使われることはない。 

しかし、記念品として大切に保管されるかといったら、案外そうでもないようで、家財道具を整理するときに、あっさりと捨てられることも稀ではない。

小学校では、ランドセルに寄せ書きを書くこともあるようだ。

画像:えみてん。Twitter

https://twitter.com/emipikusann


画像:ネットサイト

画像:ネットサイト




武蔵越生高校

埼玉県の武蔵越生高校の制服。セーラー服の上に白いブレザーを着る仕様だ。卒業して不要となった制服一式がハンガーに掛けられている。外見からはただの使い古された制服にしか見えない。


がしかし、ブレザーの裏側には、卒業記念の書き込みがぎっしり。おまけにすそにはタピオカミルクティーをこぼして、汚れたままになっているとのこと。こんなものがネット上で売りに出されていた。卒業した年に手放したようだが、女子生徒には思い入れはなかったのだろうか。



岡山南高校

岡山南高校もセーラー服の上に着る白いブレザーを採用しているが、白い制服は黒マジックインクで書き込みしやすいせいか、寄せ書きされまくっているようだ。外からは全くうかがえないが、裏地には落書きされ放題になっている。悲しいのは、記念に寄せ書きしたものの、結局は不要品扱いとなり、売りに出されてしまっていることだ。

参考>白ブレザーの表地:毛50ポリエステル50、裏地:ポリエステル、手洗い可





卒業記念の儀式や慣例

学校によっては、卒業の記念に行う様々な儀式や慣例があるところがある。

そのひとつが、着用している制服の一部を放り投げるというものである。投げられるものの例としては、ブレザー、ネクタイ、帽子などがある。特にブレザーを投げる学校は意外と多いようだ。思い切り高く投げ上げられた制服たちは、恐怖を感じたと思ったら、次の瞬間に地面に叩きつけられる。床に落ちたブレザーは踏んづけられたりもするだろう。

後輩が校庭で人文字を披露する学校では、制服姿で大胆に地面に寝そべったりしている。

有名な儀式としては、岐阜の高校で、女子セーラー服のスカーフを結んで川に流す「白線流し」というものがある。

また、海外などでは、制服を着ている卒業生に小麦粉をぶちまけたり、水浸しにしたり、もっとひどいものはぼろぼろに切り裂いたりするところもある。

→海外編 海外学校卒業式事情 参照

画像:ネットサイト


画像:青春きゅん♪あるあるTwitter

https://twitter.com/aa_seisyun/status/342662130153189376/photo/1



卒業式

大学学位授与式(卒業式)

昨今の女子学生たちは、学位授与式に振袖と袴姿で花を添える。

だが、和服を着慣れていない学生は、袖や裾が地面に付いていても気にしない。



小学校卒業式

胸に卒業生のコサージュが付いているのを見ると、「この制服はもう御役御免なんだな」と思い、この先の制服の運命に思いをはせてしまう。6年生ともなると、背負っているランドセルも異常に小さく見える。

昨今は、ランドセルに卒業記念の寄せ書きが掛かれることも多いという。少なくとも、こんな目に遭ったランドセルが再利用される道は、もう絶たれたわけだ。

 

<アイテム別>-女児服