衣類ではないが、様々な用途に使用され、喘いでいる布製品たちの悲哀。
・カーテン/暗幕
・ベッドカバー
・フットスロー(ベッドスロー/ベッドライナー)
・毛布
・ピアノカバー
・テーブルクロス/ランナー/ランチョンマット
・テーブルスカート
・敷物/カバー(テレビ番組含む)
・タペストリー
・ゴルフ練習標的
・のぼり旗/児童愛護旗
・風呂敷
カーテンや暗幕は、普段は目立たないが、汚れや日焼けで日々劣化していき、そのていども想像以上にひどいものである。特に直射日光による日焼けのダメージは激しい。
特に学校の体育館などのカーテンや暗幕は、生地の劣化により、開閉の力に耐え切れず縦裂けすることが良くある。
画像:WAKO interior
画像:WAKO interior
学校の暗幕は生徒たちに乱暴に開閉されるので、傷みもことさら激しくなる。もっと丁寧に扱ってもらいたいものだ。日焼けで激しく劣化しているものは、風が吹いただけで裂けていく物もあるという。
交換された後の古い暗幕は、程度のよいものは別の場所で再利用してもらえることがあるが、そんな幸運はほとんどなく、あっさりと処分されてしまう運命だ。カーテンも同じ。
シルクやレーヨン、ポリエステル製でサテンのシーツは、か弱い生地であるにもかかわらず、酷使される。人間は寝汗をかいたと意識しないときでも、一晩で200~300ccの汗をかくと言われている。シーツはそれを吸わなければならないわけで、加えて、皮脂や垢で汚されるし、男女が夜の営みをしようものなら、尿や精液の汚れも覚悟しなくてはならなくなる、さらに一人で寝ているとき以上にもみくちゃにされ、シワシワにされる。
画像:ヤマダモール
ホテルなどにあるベッドのカバー上の足元部分に、細長い布が横に掛けられていることがある。これは、室内でも靴を履いている欧米の習慣のなかで、靴を履いたままベッドに横になってもベッドカバーが汚れないようにするためのものだ。つまり、この布の上には靴を履いた足が乗せられることになる。
中にはサテン系の生地でできているものもあり、そんなものが足蹴にされるとはなんとも悲しい話である。さらには、着物や帯をリメイクしてフットスローにすることもあるという。女性に優雅に着用されていたものが、靴の下敷きにされるわけだ。
私がホテルに宿泊したとき、美しい生地のフットスローに出会うと、足など載せずにそっと抱いて一緒に寝てやることにしている。
画像:minne
2022/05/07付けでスクールコートフェチ様よりいただいた投稿をもとに記事を起こしている。
ベッドで人々を暖かく包んでいた毛布も不要品となると過酷な運命が待っている。
引越し業者に大型家具運搬時のクッションに使われたり、工場で油液まみれにされる。そのほかの用途はご投稿の通りだ。
調べてみると、作業用の中古毛布も売られているのを見つけて驚いた。中古の毛布が10枚セットで価格は8,980円なので、1枚あたり898円だ。
タイトルは次のようになっているが、それを見れば中古毛布がどのような用途に供される運命か想像できる。
「中古毛布(10枚セット) 約130cm×約180cm 古毛布 養生毛布 作業毛布 リサイクル毛布 運送 塗装 引越し ペット 犬猫 防寒 ガラス 額縁 楽器 保護 下敷き 緩衝 梱包 マット シート 舗装工事 古い毛布 あて布団 毛布販売」
紐できつく縛られている様子がいっそうの哀れを誘う。食い込む紐の痛みに耐えながら、己の運命をうすうす察しているであろうか。
ピアノカバーはアップライトピアノまたはグランドピアノを保護するために掛けられる布製のカバーで、表地はサテン系のものが多い。裏地はピアノを傷つけないように、ボアやフェルトの生地が張られている。たいていは表地と裏地の色合いがはっきりと異なるコントラストである。
ピアノカバーはピアノを傷や日焼けなどから守る役目しかなく、ピアノを使用するときは丸めて置かれるか、あるいは鍵盤部分だけを開けておかれる。ピアノの上には物が置かれることが多いので、それらの下敷きにされていることもしばしばである。グランドピアノの場合、鍵盤部分だけ開けられて、重い蓋の下敷きにされることもある。
画像:Budscene
画像:INSTRUMENT
ピアノカバーは日焼けすると劣化し、表地を中心にボロボロになる。
不要になったピアノカバーは他に使い道はなく、そのまま捨てられるのみである。
実際、学校などから出るゴミにはピアノカバーがしばしば含まれる。
画像:Pic-b
テーブルクロスは、主に飲食用のテーブルに掛けて使われる布地で、エプロン以上に汚されることを覚悟しなければならない。どんなに濃いソースであろうと、熱いスープであろうと、ギトギトした油であろうとお構いなしに垂らされてしまう。そしてそれが当たり前と思われることが悲惨である。
テーブルランナーはテーブル上のアクセントに置かれる布地だが、汚される可能性はテーブルクロスと同じだ。
ランチョンマットはもっと哀れで、一人ひとりの食事セットに敷かれる物であり、汚されることが前提とされる。生地がどれほど美しいものであろうと関係がない。
制作中
テーブルスカートは、飲食を伴うテーブルを中心に、それ以外でも多用される。会場に彩を沿え、テーブル下をあからさまに見せないようにするためのものである。このテーブルに椅子を入れると客の脚に蹴られたりするし、そもそも設置の段階で長さが合わないと、裾が床を引きずる。スカートという名前が付いているが、女性に着用されるスカートとは待遇が全く異なる。
商品展示のデコレーションの一環として、光沢のある生地などが使われる。お菓子ていどの軽いものならまだしも、ワインを積み上げたり、自動車のタイヤやホイールのような重量物を載せられると、その苦しみは倍増する。
料理をより豪華に見せようという試みなのか、つるつるの光沢生地がたっぷり敷かれている。客が料理を取るときに汁が垂れて汚れるが、目立った汚れではない限り、クリーニングなどされずに使い続けられる。酷い汚れの場合は、生地を交換されるだけだ。
写真のような陶器セットのほか、高級洋酒や日本酒などにも多用されている。特に酒類のような消耗品に使われた場合、駆らば異なったパッケージ一式は即用済みとなり、処分される運命だ。
子どものころ、自宅に届けられたお歳暮などの箱で見つけたサテン生地を広げてみたことがあるが、意外に大きな面積を持っていて、立派な生地だった。そんなものがあっけなく処分されるとは、あまりに悲しい。
展示台やワゴンの見栄えを良くするためか、周りに光沢がまぶしい生地を張ることがある。市販の生地を使うほか、いわゆるテーブルスカートが流用されることもある。
制作中
近距離から堅いゴルフボールを思いきり打ち込まれる標的の布地。
ボールが打ち込まれた瞬間、ズコンという低く鈍い音が響く。標的の布地はボールを受け止めて、裾が大きく跳ね上がるが、上端が括りつけられているために逃げることができず、ゆっくりとボールを下に落とさざるを得ない。そうすると、自然と次のショットを待ち構える体制をとらされるのだ。次々と容赦なく打ち込まれるボールの打撃にどこまで耐えられるのだろうか。
小学生だったころ、大人たちが標的の布地に何度もボールを打ち込んでいるのを見て、胸を痛めていた記憶がある。キャンバス地などの丈夫な布だったと思うが、やはり打ち込まれたときの布が揺れる様子や脱力したかのように垂れ下がる姿が哀れで仕方なかった。何よりも、ボールが当たったときの鈍い音が今でも頭から離れない。
写真の標的は縦180cmx横150cmサイズで、上の両端で留めてぶら下げられる。美しい光沢生地がいっそう哀れさを醸し出す。
画像:EKゴルフグリーン
画像:EKゴルフグリーン
路上に立てられている広告宣伝用ののぼり旗は、布でできているものであっても、もはや誰もそれが布製品だとは認めていないだろう。強い日差しに常に晒され、強い風に千切れんばかりにはためいていても、そんな状態が当たり前すぎて、意識する人はいない。
野ざらし状態で傷みも早く、裾や縁が裂けていく。汚れも激しい。
制作中
集団登下校時の誘導などに使われる旗を「児童愛護旗」と呼ぶ。歴史は古く、昭和35年から採用されているらしい。
児童関連施設の門柱などにも掲揚されることもあり、野ざらし雨ざらしにされている旗も少なくない。当然、紫外線を浴びてすぐに日焼けし、色落ちしてくる。みすぼらしいものは掲揚にふさわしくないので、主には4月の新学期を迎えるころに新調される。色褪せボロボロになった旗は躊躇なくゴミ箱行きにされる。女性衣類と同じく布でできているのに、こちらは屋外の過酷な環境に耐えなければならず、短命で終わる運命なのが悲しい。
↓児童愛護旗は、鳩をモチーフにした絵柄が黄色地に描かれているものだ。見たことがある人も多いと思うが、こんな旗にも名前があったのかと驚くかもしれない。事程左様に、普段は意識されていないのだ。
画像:Amazon-yamax 44x54cm
↓お寺に併設された幼稚園に掲揚されている児童愛護旗だが、色あせてくたびれてしまっている。やがて新しいものに交換され、古いものはあっさり捨てられる。
(情報提供:なにわ様)
画像:GoogleMap 大阪市内 2018/10
カラーガードのフラッグアクションでは、フラッグ(旗)が縦横無尽に勢いよく振り回される。地面を引き摺るように動かす演技もあり、生地は汚れ、擦り切れていくだろう。炎天下でのパフォーマンスもあって、日焼けもバカにならないはずだ。衣装ともたびたび干渉している。
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最終更新日:2024年11月16日
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