あなたは映画を観ています。
その中に次のようなシーンがありました。どのように感じるでしょうか?
「セーラー服を着た少女が、暴漢に襲われる」
少女は地面に押し倒され、セーラー服の胸元を裂かれてしまう。かわいい子にひどいことをするなぁ、と憤るでしょうか。
エロい気持ちがあるならば、セーラー服を引き剥がしてヤッテしまえ、と過激なことを考えるかもしれません。
いわゆるセーラー服「フェチ」ならば、ズタボロにされたセーラー服を欲しいと思うのでしょうか。
では、これはどうですか? TVのバラエティ番組です。
「美しい光沢ドレスを着たお笑い芸人が、泥沼に突き落とされる」
女性はドレスもろとも泥だらけになり、這い上がってきた姿は泥人形のよう。観客は間抜けな姿に大笑い。
サテンドレスを好む男性には、きれいなドレスなのに「もったいないなぁ」と感じてもらえるかもしれませんね。
もうひとつ、ドラマのワンシーンです。
「和服姿の美人若女将が、刺し殺されてしまう」
怨恨から刃物で刺され、血がべったりついた状態で地面に掘った穴に放り込まれ、土が被せられていきます。
さぞ無念だろうなぁ。これからどうなるんだろう?
和服に興味がある人は、高級そうな着物なのに、あんなに汚してしまって惜しいなぁと思うでしょうか。
最後にもうひとつ、ドラマのワンシーンです。
「大奥で、きれいな打掛(小袖)を着た女性たちが早足で廊下を進んでいる」
長い廊下を駆け抜ける女性たちの、打ち掛けの裾を翻し颯爽と歩く姿は格好良くも映ります。衣と畳がしゅるしゅると擦れる音も、心地よい演出効果となっています。
このシーンだけだと、特に感じることは無いでしょうか。次の展開をワクワクして観ているだけ?
これら4つのパターンに共通していること、それは「可哀想」なのです。
1セーラー服姿の少女と3和服姿の若女将は分かるよ。襲われたり殺されたりして「可哀想」だよね。
2サテンドレス姿の芸人は、まぁ、惨めな目に遭わされているっていう点で「可哀想」かな。
4大奥は、ドラマを観てみないと分からないな。
皆さん、登場する女性にのみ注目していますね。
衣装はどうなっても構わないのですか?
1~3では、セーラー服やパーティドレスや和服たちが、裂かれたり、ドロドロにされたり、血糊をべったり付けられたりして台無しにされています。演出のために再起不能に陥れられた衣類たちは、そのあと処分されるしかないのです。
4のケースでは、打掛(小袖)の裾がずるずると引き摺られていることに気づいたでしょうか?
畳や床の上とはいえ、ふき(打掛の裾)の重みと引き摺られる速度も手伝って、打掛にはかなりのストレスが掛かっているはずです。
実は、これらに使われた衣装たちこそ、みな「可哀想」なのです。
ドラマや映画はすべて仮想の世界ですが、そこで使われる衣装たちに行われていることは現実なのです。汚されたり傷めつけられていることは、すべて事実なのです。「カット」が掛かったら元に戻るということはありません。
私は、子どものころから、このような目に遭わされている衣装たちを観るたびに胸を痛めていました。
→→→まだまだある「ドラマ・映画・舞台」の可哀想な衣類たち
ドラマや映画の世界だけではありません。
女性衣類たちは日常的に苛酷な環境で使われて、必死にそれに耐えて過ごしています。
着用されて皮脂で汚されるブラウス、座ったときに尻に敷かれて皺くちゃになるスカート、食べこぼしで汚されるワンピースドレス、脱いだときにバッグに押し込まれる上着、酷使されてテカテカに摩耗する制服、雑に脱ぎ置かれるコートなど。
学校生活でこき使われた制服は、卒業したら即不要品扱い。特に感謝の言葉を掛けられることも無く、処分されていきます。
燃えるゴミ、衣類ゴミ、リサイクルショップ、ネットフリマと方法はさまざまですが、その行き着く先はいずれも地獄です。
また学校制服は女子生徒の象徴として、アダルトビデオやサイトなどで常に凌辱される運命にあります。そのような衣装として捕まってしまったら、まさに地獄の一丁目と言えましょう。
日本では、パーティドレスのような華麗なドレスの出番は多くはありません。購入されてもすぐにタンスの肥やしになります。
レンタル衣装は、どんな性格の人に着られるかも分からず、着用者は借り物の気安さから汚れなども気にしません。
さらに業者でも使いまわされ、払い下げられ、とことん酷使される運命です。
また、世の中にはサテンフェチと称する、ツルツル生地のものを愛好する人たちが少なからず存在します。ネット上で取引されている中古衣類の中には、こうした目的のために購入されているドレスたちも多いことでしょう。そうなると、二度と女性に着用されないばかりか、想像を絶した使われ方をするのです。
日本の民族衣装なのに、我が国では和服の出番も限られていて、ほとんどがタンスの肥やしにされがち。慇懃無礼ともいえるほどに大切にされているものも、程度が過ぎれば畳みジワや虫食い、カビ、シミなどが付いてしまいます。そして結局、ほとんど袖を通されないまま、買取業者に引き取られ、中古業者やリサイクルショップに投売りされる。心ある女性にまた着てもらえれば良いのですが、運が悪ければリメイクの生地取りにされる。
少し時代のある古い着物は、アダルトビデオの衣装にされてしまったり、オモチャにされる確率は低いとはいえません。豪華な振袖や卒業式の正装などもその餌食となりかねないのです。特に年代ものは長いあいだ生き延びてきたのに、一瞬にして強姦される憂き目に会います。
大奥の打ち掛けに似た衣装といえば、花嫁衣裳があります。一見優雅ですが、裾には太いフキ(綿入れ部分)があり、それが引き摺られるとかなりのダメージです。裏側は優しい正絹なので、すぐに擦り切れができてしまいます。
見た目以上に「か弱い」衣装は、花嫁を一生に一度、輝かせてあげようと必死に頑張っています。そういうことがどれほど顧みられているでしょうか?
さらには、花嫁衣裳とてアダルト目的の性被害から逃れることはできません。いやむしろ、花嫁の持つ清純さ・無垢さを想起させる花嫁衣裳は、和装も洋装も、その向きには人気があるようです。まさに対極にあるような、下劣な犯され方をする可能性を秘めているのです。
衣類たちは衣類として生まれてきたのだから、着用されて傷められ、汚されることは想定されていること。それは当たり前だと思うかもしれません。しかし、私たちが人間に生まれたいと願って生まれてきたのではないのと同じように、衣類たちも衣類に生まれたいと思っていたわけではありません。でも衣類として生まれてきた以上、少しでも楽しく、有意義に過ごしたいと願うことは許されるはずです。
衣類たちは、私たち人間とは異なり、自らの意志で物事を決め、動くことはできません。だからこそ、私たち人間が思いやりを持って丁寧に扱わなければならないのです。
僅かでもいい、気遣いといたわりの気持ちを持ってほしいのです。
航空会社のCAは優雅に見えてタフな職業である。裏の顔をとやかく言うことは控えるが、その制服もかなり雑に取り扱われている。
か弱いシルクの生地でも、労わられることなく尻に敷かれてしまうのがスカートの運命だ。
学校制服は、着用してくれる女子生徒に頑張って奉仕している。卒業するころにはテカリや擦り切れなど満身創痍だが、卒業したら感謝の言葉も無く処分されてしまう。
某レストランで使われていたウエイトレスの制服は、モデルチェンジの一声で一瞬にして不要品となった。まだまだ使えそうなワンピースと新品同様のエプロンも、翌日からは何の役にも立たない布切れとなる。結局、邪魔者は玉結びにされてゴミ箱行きだ。企業制服は、明日、我が身がどうなっているのか、全く窺い知ることができない。
人間は神によって創造されたものであるがゆえ、その運命や死についても神のご意志に従うのみだという考えがあります。創造されたものは創造主が自由にできるのだという考えに基づくと、衣類たちは創造主である人間によって生み出されたものであるから、それを生かすも殺すも人間に委ねられて当然だということになるのかもしれません。
しかし、私自身は宗教とは無縁のところにありますから、そういう論理を衣類たちに当てはめようとは思いません。ただただ衣類たちにも尊厳があることを見出していただき、大切に取り扱って欲しいと願うのみです。衣類たちに敬意を払い、感謝の気持ちを持って接していただきたいのです。
衣類は人間が生み出したものだから、どのように対処しようと人間の勝手だというのは傲慢に映るのです。
大仰なことはしていただかなくとも、せめて「可哀想に」と思っていただくだけで、衣類たちは浮かばれるでしょう。私たちの何気ない行為によって、衣類たちが虐げられ、苦しみに喘いでいることを知っていただきたいのです。
物を大切にするというレベル以上に、衣類に魂を感じていただき、生き物であるかのように愛情を持って愛しんでいただくことはできないでしょうか。
では、日常生活のなかでいったいどのようなことが衣類にとって苛酷な環境なのか。どんなことをされたら苦痛や屈辱を味わい、何に耐え忍び、何によって辛い思いをし、どのような場面で恐怖を感じるのか。
ふだん私たちが気がつかないような些細なことでも、衣類たちは敏感に受け止めています。
それを漏らさず解き明かしていこうというのが、このサイトの趣旨であります。
意外な発見や反論など様々なご感想をお持ちになると思いますが、このサイトが、衣類たちの置かれている身分や立場の向上、また環境や待遇の改善に僅かでも繋がれば幸甚です。
そして、もうひとつ、少しマニアックな部分かもしれませんが、私は、衣類たちを「可哀想に」と感じるや、次の瞬間に「興奮」が沸き起こってくることに気づきました。小学生の頃、クラスの女子の制服を可哀想に思いながら、まだ精通する前から股間をまさぐっていたことを思い出します。その後は衣類の可哀想な状態をオカズにして、自慰行為をするようになりました。可哀想が性的興奮へと発展するという不思議なリンクがあるのです。
もし同じような嗜好をお持ちの方がいらっしゃるのなら、ご一緒に、そのリンクの謎やメカニズムも究明していきたいと思っています。
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最終更新日:2024年11月16日
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