航空会社のキャビンアテンダント(スチュワーデス/CA)や地上職員(グランドスタッフ/GS)はみな美しく、颯爽としていて憧れの的だ。しかし、優雅に見える彼女たちの制服も、職場では仕事着に過ぎない。
ロッカールームや機内は意外と汚れが多いようだし、機内サービスの飲食物でも汚れが付く。
機内サービスが始まったら、制服の上着はコンパートメントなどに押し込まれてしまう。
CA用シートに座るときも、いちいちスカートの裾など気にしない。
エプロンもサービスが終了したら、適当に丸められて片付けられる。シートの間に押し込まれる例もある。
CAに着用されず、ミュージアムやイベントで来場の見学者に供される試着用制服も。背中がざっくり切り開かれていて、ワンタッチで着用できるように改造されている。
以前、日本航空の香港-成田便に搭乗したとき、ビジネスクラスの一番後ろのシートに座っていた私は、トイレからの帰りに自分のシートの背もたれにあるバックポケットに、CA制服の上着が丸めて押し込まれているのを目撃したことがある。
機内に乗り込んだとき、CAたちは正装状態で出迎えてくれるが、彼女のうち誰かが先ほどまで着用していた上着である。機内サービスの準備が始まるや否や、上着は脱がれ、適当に丸められて小さなシートポケットに押し込まれたのである。
そういえば、綾瀬はるか主演の邦画『ハッピーフライト』でも、機内サービスの準備のために、乱暴に上着を脱ぐシーンが出てくる。優雅に見えるCA制服も、所詮は仕事着に過ぎないのだ。
CA制服は航空会社の顔であるから、モデルチェンジも頻繁に行われる。また、ちょっと調べてみると、経営難などによる統廃合もなんと多いことか。モデルチェンジや統廃合のたびに、何の罪もない制服たちが不要品扱いされ、昔は単純に処分、現在はリサイクルの名の下に裁断・粉砕されていく運命なのである。
ちなみに航空会社の制服は、創立時からモデルチェンジするたびに、便宜上「何代目の制服」と称される。その数字の積み重ねは、過去に処分されてきた制服たちの痛みでもあることを忘れないで欲しい。
当時業界3位の中堅航空会社だったが、相次ぐ機体損傷事故により経営不振となり、2016年11月に突然、全便の運行停止が発表され、解散となった。CA制服は以後、不要品となり、いっせいに処分されることとなったのだろう。
最後の制服は七分袖のワンピースタイプで、ジャケットやスカーフの類はなく、ブラウスなども着用しない。一般格のCA制服は白い襟で、パーサー格のCA制服は襟に紫色のサテン生地が使われている。なお、地上職の女性制服は、一見すると一般CA制服に似たデザインだが、上下別々のスーツ型になっている。
画像:Instagram
↓一般CA制服
↓パーサー格CA制服
画像:Taiwan露天拍賣
画像:Taiwan露天拍賣
2006年8月26日より採用されているCA制服。赤系と青系がある。
画像:摄影师凡哥
画像:ebay xiaojingzi6427
オーソドックスな濃紺のスカートスーツだが、上下とも裏地に真っ赤なサテン生地が使われている。
画像(上2点):Instagram candybomb 0206
1991年に破産により運行停止。
デルタ航空と経営統合し、2010年にデルタ航空となった。
2010年にユナイテッド航空と持ち株会社方式で経営統合し、2012年に完全統合して消滅した。
2015年に経営破たんにより運行停止となった。最後の制服は2011~2015年に採用されたものである。スカート、ジャンパースカートとも、紺色の裾のスリットから覗く赤いプリーツが魅力的だった。上着やジャンパースカートの裏地も、はっとさせられるような真っ赤な色使いである。
トレンチコートにも、赤・紺2種類あって、表地は光沢があり、裏地はコントラストのある色が使われている。
赤い革手袋も刺激的に見える。
画像:ヤフオクm0w0m2006
ロシア連邦の航空会社で2006年にモスクワの六市あ航空とサンクトペテルブルクのプルコヴォ航空が合併して誕生した。アジアには中国までの便があるが、日本には乗り入れていない。英名のRossiyaというのはミスタイプではない。
CAの制服は青色でデザインもいかにも客室乗務員というような古風なイメージだが、裏地に真っ赤な生地が張られていて、見事なコントラスト衣類である。
ロシアの民間航空会社で東ヨーロッパでは第一位の規模を誇る。元はソビエト連邦の国有航空会社で1923年に設立された老舗だ。
CA制服は、夏冬とも同じデザインで色が異なる。冬服は真っ黒、夏服は鮮やかなオレンジ色だ。いずれも襟の無いジャケットとワンピースを着る。ジャケットは夏冬とも同系色の総裏地付きだが、ワンピースには冬服も裏地はない。
画像(上2点):sohu.com
2018年7月15日、モスクワで行われたサッカーワールドカップ決勝戦の表彰式は大雨のなか行われた。後ろに並んでいるえんじ色のっ制服の女性たちはエティハド航空のCAだ。同航空会社はUAE(アラブ首長国連邦)に拠点を置く会社で、ワールドカップ・パートナーとして勢ぞろいさせられたわけだが、降りしきる雨の中で傘もなく、制服がずぶ濡れになっている。
画像:FIFA NHK/TBS
エミレーツ航空の現在のCA制服は、帽子に付いているベールがエキゾチックな風情を醸し出している。
エミレーツ航空のCMが話題になっている。ドバイ首長国連邦(UAE)にある世界一高いビルのてっぺんに、実際に制服姿の女性を立たせて撮影したものだそうだ。CGなどのトリックは無いという。
もっとも女性はCAではなくスカイダイビングの専門家らしいが、着用されている制服は本物だ。制服がどれほど怖い思いをしたかは想像を絶する。しかも安全確保のためにハーネスを装着しているのだが、ジャケットの背中の縫い目部分を割いて、カラビナなどをつないでいる。
制作中
写真は、シンガポール・チャンギ国際空港のシンガポール航空グランドスタッフの研修生。搭乗時に私にアテンドしてくれた際に撮影させてもらった。まだ大学生で、インターンシップの一環で仕事をしているそうだ。出発ゲート前のセキュリティエリアに入るとき、水色の上着を脱いでX線検査機に通していた。金色のボタンがごつい金属製のため、検査機に通す必要があったのだろう。その際、上着を丸めてトレイに載せ、その上着の上にバッグを置いていた。
この制服の上着は、近くで観るとポケットのあたりがひどく汚れていた。当時のグランドスタッフの制服だったので、スタッフ何人かで着まわしている制服なのだろう。
ベトナム・タンソンニャット国際空港にて撮影した、シンガポール航空グランドスタッフたち。
制服の上着が、談笑するスタッフの横に脱ぎ置かれていた。
シンガポール・チャンギ国際空港の出発カウンター。キャセイの前制服でCAと同じデザインだ。この写真では分からないが、ツルツル生地の派手な黄色い裏地が目を引いた。2008年頃の撮影なので、ジャケットは着丈が短い、前制服の後期型になっている。
2012年8月18日に、海南航空のCAが、フライトの遅延に激怒した乗客から、カップ3杯の熱湯を浴びせられたという。制服も熱かっただろう。人間の身勝手が生んだ悲劇だ。
画像:南方都市報
→参考:海南航空歴代制服(外部リンク:china news)
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最終更新日:2024年11月16日
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