ドラマ/映画/舞台衣装

ツッパリの格闘シーンで鷲づかみにされたり、蹴りを入れられたり、地面を転がったりするシーン。演出効果のために、わざわざ汚されたり切り裂かれたりする衣装たち。

演技で使用される場面では、俳優にとってはフィクションでも、衣装にとっては現実なのだ。

アイドルが着用する衣装にも苦労が多い。早着替え用に作り変えられた衣装。また、乱暴に脱ぎ着される衣装。ダンスで振り回される衣装など。

いずれにせよ、そのような場面に遭遇すると、録画を何度も繰り返し再生したり、スローモーションで観賞したりしてしまう。

女優に着られていなくても、部屋に吊るされていたり、ソファに投げ置かれていたりする衣類を見るだけで反応することもある。

 

ドラマや映画、バラエティ番組などでは、メーカーから協賛提供されることも多く、新品の衣装たちが惜しげもなく台無しにされて処分される。どこのメーカーの物かは、テロップの「衣装協力」を見れば見当がつく。

また、ネット上や雑誌などでも、衣裳を特定して紹介しているものがある。気になる衣装があれば調べて、同じものを入手することもまんざら不可能ではない。私のフェチな友人の中には、そのような衣装を積極的に購入して、ビデオを再生しながら自慰行為に耽るという人がいる。




かわいそうな衣装の例

飛び散る絵の具

2005年ごろの学園ドラマだったか、撮影裏話が週刊誌に書かれていた。

いわく「教室で絵の具が飛び散る心霊現象の撮影で、制服数十着が一瞬にして台無しになりました」と当たり前のように書かれていて、驚いたことがあった。衣装に使われた制服は制服メーカーから提供されたものだったそうで、撮影終了後はまちがいなくゴミとして処分されただろう。

ドラマや映画の何気ないシーンの撮影の裏では、とんでもないことが平然と行われている。人間や動物などの生き物への配慮はじゅうぶんに行われるようになってきているようだが、衣装に対する虐待は止まない。


崖から突き落とされる人形

人間が突き落とされたり飛び降りたりするシーンでは、ダミー人形が使われることが多いが、それに着せられている女性衣類はたまったものではない。昨今ではリアリティを出すためにダミー人形も人体と同じような体型と体重を持っているので、その衝撃はかなりのものであろう。

特に崖から突き落とされるようなシーンでは、あちこちが叩きつけられ酷いダメージを負う。


殺人事件の遺体

ナイフを刺し込まれた部分は、当然切り裂かれているだろうし、血糊でべったり汚される。刺したほうも返り血を浴びるという設定ならば、全身に血糊を被ることになる。見た目の効果をセンセーショナルにするために、白いブラウスやドレスであったりする。真っ赤に血糊を染み込まされた衣装は、撮影後は当然ゴミ袋に押し込まれてオシマイなのだ。


再現ドラマ

テレビ番組で、実際に遭った事件を数分のドラマに再現したものを放送していたが、その中でズタズタに引き裂かれたナース服があった。同僚の嫌がらせにあっているナースが、出勤してロッカーを開けると、吊るしてあったナース服がいたずらでズタズタに引き裂かれていたという設定だ。

短いエピソードを紹介するのに作られた僅か数分のシーンで、わざわざずたずたにきり去られなければならなかったナース服のことを気に留めた視聴者が何人いたことか。


いじめ

学校でも職場でも、いじめを表現する手段として、制服などを汚損・破損するシーンは多い。

学校でいじめられる典型として、制服姿のままトイレに閉じ込めて水を頭から掛けたり、飲食物や汚物を投げつけたりするシーンは、いつ観ても胸が痛む。NG出すことを想定して、汚され役の制服は数着用意されるのが通例だ。

叩かれたり突き飛ばされたりする場合は、迫力を出すために小麦粉などの粉末をまぶしておくことがあるとか。そうすると一瞬、粉が舞い、インパクトが目に見えて強調されるのだ。

ロッカーに入れていた制服がズタズタボロボロにされるというのも良く見られる演出である。この場合はもう復活するのは不可能となり、即ゴミ箱行きとなる。

もっとも、いちど撮影に使われて汚れた衣装は、制服ていどであればそのまま廃棄されることが多いようだ。

→シチュエーション別 いじめ 参照


学園ドラマの格闘シーン

いわゆるツッパリのヤンキーたちが乱闘するシーンで、スケバン(女番長)が出てくるものがある。できるだけ荒っぽい様子を見せるために、激しい動きが随所に取り入れられるので、鷲掴みにされたり、汚されたり、それに付き合わされる制服たちも大変である。


濡れる洋服や和服

土砂降りの雨の中を傘も差さずに歩いたり、ぬかるみに倒れたり、お茶をこぼしたり、飲食物を掛けられたりするシーンは数多い。お金を掛けた撮影では、衣装も豪華なものが多いが、高価な衣装であっても躊躇なく濡らされたり汚されたりする。そして、どれほど素晴らしい衣装が惜しげもなく使い捨てにされているかを自慢げに宣伝することもあるのだ。


引き摺られる大奥の打掛

豪華な打掛の着物の裾がズルズルと引き摺られる様子に、子どものころから胸を痛めていた。特に裾裏は紅絹(朱色)の光沢のある生地が使われているものが多く、か弱そうな生地を引き摺りまわすのは本当に酷なことだと思っていた。

ドラマの中はもとより、実際の歴史においても、裾部分の摩耗は甚だしく、その部分の生地だけを修繕で取り換えることは日常的に行われていたようだ。もっとも、上位の人が着た打掛は1回ないし数回着ただけで下位の者に払い下げられ、順次、下へと受け継がれていったそうだから、何人もに使いまわされながらということだ。